和歌山バーテンダー物語 vol.05
- 2015/2/12
- 大人リビング
- 和歌山バーテンダー物語
そのBARは橋のたもとにあって川に面する、と聞くだけでワクワクし、川面を眺められるテーブル席もあるとなれば、なおさら心が躍りそうだ。
「オーセンティック(本格派)ではないので、気軽に来て、楽しんでほしい」。バーテンダーのキャリア21年になる上田さんは、私たちに少し距離を置くかのように話し始めた。初めての出会いで緊張状態の際、グイグイ来るのではなく、相手の気を少し楽にさせる接し方。「取材は慣れていないので、すみません」と断りながら、言葉少なに話す。どこか渋さも感じられる。
バーテンダーは客の心を読み、客は心を読み取ってもらって、酒が出される。ピッタリ重なった時、最高の時間が始まる。「おまかせで」とオーダーが入っても、瞬時に客の意向をめぐらせて作り、一杯のグラスを差し出すのがバーテンダー。店に300種類以上のボトルが並び、無限大のレシピが上田さんの頭の中にあるから可能。お決まりのビールや日本酒だけの店では、こうはいかないだろう。
「お酒を作るのも好きですが、お客さんとの、一期一会の接点も楽しい。それが店をこれまでやってきた理由の一つ」。店を開いて10年目になるそうだ。
撮影中、「気軽に、気取らずにとはいえ、Tシャツでは店に立たないでしょうね」と投げかけてみた。「それは、まぁ」。最低限の礼儀が存在することに、BARを訪ねる心地良さを感じる。
帳(とばり)が落ち、川面を見つめながら一人、マスターが自分に選んでくれたお酒を飲む。これこそ最高の時間。
(次回は3月14日号に掲載)
住所 | 和歌山市東蔵前丁32 |
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電話番号 | 073(423)1163 |
営業時間 | 午後6時~翌1時半 |
休日 | 日曜 |
HP | http://www.bar-marisco.com |
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