南極生活 観測隊交代式⑤

―梅の花がちらほらと咲き始めています。梅の花を見ると、今でも卒業式を思い起します。
 2月は南極地域観測隊(越冬隊)も交代の時期。昭和基地の前の広場で式典が行われます。食事会もあり、後次隊の人が帰国する前次隊の人をねぎらうのが習わしです。
―南極に到着し、式典を終えたときの気持ちって、ワクワクしましたか。
 ワクワクというよりも、担当する仕事に対する責任、トラブル対応への不安など、さまざまなな気持ちが入り混じっていました。
―それだけ緊張していたということですね。その中での楽しみは食事だったり…。
 そうですね(笑)。越冬隊には料理人が2人いて、いろいろな料理を作ってくれました。どの料理もおいしかったです。持ち込んだ野菜は途中でなくなるので、水耕栽培でキュウリやトマト、モヤシなどを作りました。 
―栽培はOKなの?
 事前に申請した種は持ち込みOKです。
―南極で恋しくなった料理はありますか。
 お気に入りの店のラーメンです。帰国してすぐに食べに行きましたよ。
―1年以上の南極生活。帰国を実感したのは?
 引き継ぎを終え、自分の部屋の掃除をしたときですね。“1年間がんばれた〟と思いました。
―達成感でしょうか。
 ペンギンの調査や岩石採取など、他の隊員の研究の手伝いをする機会に恵まれても、なかなか参加できなかったという心残りもあります。でも、担当の高層気象観測業務を、何事もなく後次隊に引き継げた達成感は大きかったです。南極での貴重な経験を今の仕事で生かしていければ!

第59次隊と第60次隊の集合写真(後列左から2人目が田中さん) 提供=国立極地研究所

回答者
田中省吾さん
和歌山地方気象台の技官で、日本南極地域観測隊の元隊員

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