医療費削減と環境保全を目指す団体が設立
コメで健康をいただきま〜す
- 2023/11/23
- フロント特集
近年、栽培や加工法などによって、おいしく、しかも栄養成分を多く含む機能性を持つコメの需要が拡大。そんな中、コメを通じて国の医療費削減と環境保全を目的に、全国の産官学消472団体・個人が集結。11月14日、「医食同源米によって我が国の国難を解決するためのコンソーシアム」が設立されました。
毎日食べる物だからこそ意識
機能性を持つコメの需要が拡大
「医食同源」「人間の体は食べ物でつくられている」というように、日頃から食べる物を意識することは、健康を維持する上で大切。毎日のことだからこそ、できるだけ体に良い食品を選び、食べたいものです。
今回取り上げるのは、「コメ」。日本人が習慣的に多量摂取する食材で、1日3食、主食をコメにした場合、総エネルギー量の約50パーセントを占めるといわれています。いち早くコメと健康の関わりに着目した、コメの総合メーカー「東洋ライス」(本社=和歌山市黒田)は2005年、独自の加工技術により、本来削り取られていた食物繊維やビタミンBなどの栄養成分を残して精米した無洗米「金芽米(きんめまい)」を開発。それまで産地銘柄や食味に評価の重点が置かれていた市場で、コメの価値を決める新たな要素として、栄養成分(機能性)がよりクローズアップされた出来事でした(詳細は次次項)。
昨今、健康意識の高まりで、金芽米の他、胚芽米や発芽玄米など、さまざまな機能性米の需要が伸長。大学などの研究機関がコメの栄養成分に注目し、その健康効果に関する研究が進んでいます。
健康度を高めて医療費削減へ
コメの需要増は環境の保全にも
「医食同源米によって我が国の国難を解決するためのコンソーシアム」は、自治体や研究者、生産者、企業、消費者など、全国規模の団体。国の課題となっている医療費削減と環境問題の解決を目的に設立されました。
ここでいう「医食同源米」とは、栄養成分を多く含み、健康に良いとされるヌカ成分を残し、「無洗米」に加工したコメ。同団体は現在、子どもや妊婦に向けた普及と環境づくりに注力。コメを通じて生涯にわたる健康的な体づくりにつなげようと進めています。
すでに、和歌山県すさみ町では小・中学校の給食(詳細は次項)、大阪府泉大津市では小・中学校の給食の他、妊婦への無償配布など、医食同源米を導入。各地で広がりが見られるように。同団体世話役の担当・江原崇光さん(東洋ライス)は「医食同源米を食べ続けることは、医療費の削減や健康寿命の延長にもつながります」と説明。
一方、農林水産省は今年7月~来年6月の主食用米の需要量が過去最低を更新と予測。江原さんは「消費が増えると、休耕田が減り、食料自給率も上がります。また、水田があることで生物の多様性なども守られます。環境保全という視点からも広めていきたいです」と先を見据えています。
コンソーシアムの構造
オールジャパンで国の課題解決へ
11月に行われた「医食同源米によって我が国の国難を解消するためのコンソーシアム」の説明会と、県内の取り組みを伝えます。
コンソーシアム
生産者から消費者までの浸透を呼び掛ける
「医食同源米によって我が国の国難を解決するためのコンソーシアム」の説明会が11月14日、東京都内で開催。会員や関係者ら約290人が出席し、規約の制定や代表会員の選任などが行われました。発起人の雜賀慶二・東洋ライス社長は、国の医療費やコメ消費量の減少による休耕田の増加、食料安全保障問題などに触れ、「あらゆる方面で国難が山積している状況。コメの加工方法を変えるだけで結果的に国難の解消につながるということを、生産者から消費者まで浸透させることが大切です。コンソーシアムの展開によって、オールジャパンで進めていきましょう」と呼び掛けました。
すさみ町
学校給食から町民の健康と環境意識の向上へ
すさみ町は、住民の高齢化率が47%超え。財政に占める医療費の比率が高いという課題を抱えています。そこで同町は、子どものころから健康でいてもらおうと、小・中学校の給食に着目。2020年6月から全校の給食で地元産のコメを加工した医食同源米を導入しています。また、カツオ漁で栄えてきた同町。海の環境保全意識が強く、給食の導入に合わせて、無洗米がコメの研ぎ汁による水質汚染を防ぐこと、ヌカが水田の肥料として使われていることなどを子どもたちに説明。子どもを通して、保護者世代、さらに町民全体の健康と環境保全への意識向上に取り組んでいます。
コメを軸に健康と環境に貢献
医食同源米の開発秘話
家事のひと手間をなくしてくれる、研がずに炊ける「無洗米」。便利さが表だっていますが、実は環境保全のために生まれたもの。無洗米を開発した東洋ライス・雜賀慶二社長によると、きっかけは1976(昭和51)年、紀淡海峡のひどく濁った海を見たことだったといいます。
当時、日本は高度経済成長期で産業構造の工業化が進んでいた時代。下水処施設が整備されていない地域も多く、公害に揺れていました。精米機の開発と、コメの研ぎ汁の研究に取り組んでいた雜賀社長は、「海洋汚染はリンや窒素を含むコメの研ぎ汁も原因では?」と考えるように。
開発の大きなヒントは雜賀社長のズボンについたガムでした。“ガムにガムをつけるとはがれる”という原理を利用し、同じ粘着特性を持った「肌ヌカ(コメの研ぎ汁の基)」で肌ヌカをはがし取る実験を開始。1991(平成3)年、無洗米の機械を独自開発。「BG無洗米」が誕生しました。
BG無洗米が軌道にのったころ、雜賀社長の目は水質汚染から国の医療費増大に向けられていました。白米の外側にあるヌカには多くの栄養が含まれていることから、「ヌカを取り除いた白米はおいしいものの、ほとんど栄養が残されていない。栄養があって、おいしい白米を生み出さねば」と決意。白米とヌカ層の間に注目しながら研究を進め、白米と玄米の皮の間にある層「亜糊粉層(あこふんそう)」の部分に、食物繊維やオリゴ糖などの栄養成分とうま味成分が多いことを突き止めました(下図)。
しかし、亜糊粉層は非常に薄い層のため、精米時にヌカと一緒に削れてしまうのが難点。何度も機械の精米方法を調節し、2005(平成17)年、コメの表面に亜糊粉層を残す精米法にたどり着きました。コメは、胚芽の基底部にある金色の部分を残すことから「金芽米」と命名。栄養とおいしさを両立したコメが世に出回りました。
その後も、玄米の表面を覆っているロウ層だけを除去し、白米のように食べやすくした「ロウカット玄米」を開発。コメを基軸にした人々の健康維持、環境保全への取り組みは国内外に広がっています。
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