抗酸菌という種類の細菌が原因で起こる肺の病気「肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)」。近年、増加傾向にあるものの、まだあまり知られていないのが現状。どういった病気なのか、和歌山県立医科大学で話を聞きました。
服薬などで痰の中の菌″陰性化”目指す
いつまでも続く咳。アレルギーやウイルス、細菌など、原因はさまざま。近年、患者が増えていることから、正しい知識を身につけておきたいのが「肺NTM症」と呼ばれる肺の感染症です。
肺NTM症は「抗酸菌」と呼ばれる細菌のうち、結核菌とらい菌を省いた「非結核性抗酸菌(NTM)」が、肺に感染して起こる慢性の病気。和歌山県立医科大学医学部内科学第三講座・中西正典准教授(写真)は、「病気を引き起こすNTMは約40種類。国内では原因の大半がMAC(マック)、カンサシ、アブセッサスという抗酸菌です。特にMACは約9割を占め、“肺マック症”ともいわれています。ただし結核菌と異なり、人から人に感染することはありません」と説明します。
NTMは土や水回りなど、身近な環境に潜んでおり、ガーデニングの土ぼこりや風呂のシャワーのミストに含まれる菌を吸い込むことで感染するといわれています。ただ、誰でも感染するわけではなく、国内ではやせ型の中高年女性が多いとも。中西准教授は、「初期症状はなく、何年もかけてゆっくりと進行するのが特徴。次第に咳や痰、発熱、疲労感などの症状が出てきます。重症化すると喀血(かっけつ)したり、呼吸困難になったりする人もいます」と伝えます。
治療には抗菌薬が使われ、少なくとも1年は服用しなければなりません。中西准教授は「肺マック症の場合は3種類の薬を併用。一定期間、標準治療を行った人には吸入薬を処方することもあります。ほとんどの肺NTM症は難治性なので、肺の中の菌を全て取り除くことが困難な場合が多いです。そのため、痰から菌が検出されなくなる“陰性化”を目指します」と説明します。
感染予防には庭仕事や掃除の際、マスクをするなどの工夫も大切。気になる症状があれば、医療機関を受診しましょう。
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