世界遺産登録20周年・聖武天皇行幸1300年
歴史の深さと尊さを知る
2024年の和歌山
- 2023/12/26
- フロント特集
「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録されたのは2004年。聖武天皇が和歌の浦の地に行幸したのは724年。これら歴史的偉業の節目にあたる2024年をまもなく迎えます。深く刻まれた尊い歴史を振り返るとともに、2024年に和歌山で予定されている記念イベントを紹介しましょう。
古式ゆかしい儀式
令和の時代に見事再現
「京、鳥羽の地に鎮座する城南宮。鳥羽上皇と待賢門院(たいけんもんいん)一行は身を清め、道中の安寧を祈願する『熊野詣出立の儀』に臨み、遠き熊野に旅立とうとしている…」
2024年、「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産登録20年を迎えるのを契機に、和歌山県は「令和の熊野詣」(2面参照)を企画。そのオープニングセレモニーとして、「熊野詣出立の儀」を再現する「出立式」が、12月9日に城南宮(京都市伏見区)で古式ゆかしく行われました。
「浄衣」と呼ばれる白い装束に身を包んだ岸本周平和歌山県知事(上皇役)と、俳人の黛まどかさん(女院役)は、神楽殿(かぐらでん)に着座した後、陰陽師(おんみょうじ)が奏上。上皇と女院は人形(ひとがた)で体をなでたり、おおぬさを引いておはらいをするといった作法を行い、女院は市女傘(いちめがさ)を着用し、道中に使用するヒノキの杖(つえ)を受け取ります。
神楽殿の儀式を終え、いよいよ熊野へ出立。先達(せんだつ)、上皇・女院、山伏、そして白装束を着た一般参加の総勢約70人が、ほら貝の音に合わせて境内をゆっくり歩きました。
上皇役を務めた岸本知事は「神々が宿る聖地熊野は、和歌山県にとって大切な財産。1300年前から女人も入ることができるジェンダー平等の霊場でした。私たちは、こんな素晴らしい場所に住んでいるのだという誇りを持ち、一人一人が宣伝大使になって、いろんな人を和歌山に呼んでもらいたいですね」と和歌山県民にメッセージ。黛さんは「これまで何度も熊野古道を歩き、底しれない魅力を感じております。熊野に根ざしている日本人の心や精神性を、和歌山県民のみなさんも20周年をきっかけに見つめ直してもらえれば」と話しました。
いまさら聞けない?
世界遺産とは
ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が、「遺跡や建造物、自然などすべての人々が共有し、未来の世代に引き継いでいくべき人類共通の宝物」との基準から、文化遺産、自然遺産、複合遺産を認定・登録しています。「紀伊山地の霊場と参詣道」は2004年7月に登録、日本で当時12件目のことでした(現在は25件が登録)。
積み重ねられた歴史を踏まえて未来へ伝える
国内外での積極的なPRと
受け入れ体制の構築
古代から、神々が宿る特別な地域と考えられていた紀伊山地。「熊野三山」「高野山」「吉野・大峰」などの霊場を結ぶ参詣道が形成されました。千年以上にもわたって、全国から多くの人々がこの地を参拝。日本の宗教・文化の発展と交流に、大きな影響力を与えました。
2004年7月、「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録。山岳霊場と参詣道、そして周辺地域の文化的景観(山、森、川、滝、温泉、田園など)が主役となって、世界でも類を見ない資産として評価されています。
登録からまもなく20年。行政と県民が一体となり、貴重な資産を守り、活用する努力が実り、国内外から多くの観光客が訪れ、地域の発展に大きく貢献しています。
和歌山県観光局によると、コロナ禍で外国人観光客の数は落ち込みましたが、今年度は回復傾向をみせ、世界遺産エリアの高野山や熊野古道には、欧米や豪州から多くの観光客が訪れています。
旅行ガイドブック「ロンリープラネット」の「ベスト・イン・トラベル2021サスティナビリティー部門」で和歌山が世界で唯一選ばれるといった快挙も達成。これまで、米CNNテレビや英BBC放送など大手メディアのウェブサイト内に、県の観光の魅力を紹介するページを開設するなど、世界に向けてのPRに力を入れています。
一方で、受け入れ体制も整備中。観光案内板の多言語化や、県内バス情報のグーグルマップへの登録などに取り組んでいます。また、地域の人々の協力などで保全活動を継続。次世代に世界遺産の素晴らしさを伝えるために、あらゆる面から全力で景観の維持に取り組んでいます。
「令和の熊野詣」の他、2024年に予定されている和歌山県の取り組みを紹介しましょう。
●社寺の特別行事
世界遺産登録社寺をはじめ、県内の主な社寺による特別拝観などが検討されています。
●県内周遊企画
公共交通機関などと連携し、鉄道を活用した県内周遊(ウオーキング、サイクリングなど)を企画中。
●3霊跡スタンプラリー
弘法大師空海ゆかりの3霊跡(善通寺・香川県、東寺・京都府、金剛峯寺・和歌山県)をめぐるスタンプラリーを、2024年12月末まで実施。
2024年10月27日(日)※予定
「和歌の聖地 和歌の浦1300年記念大祭」
聖武天皇の玉津島行幸を再現!
和歌の聖地として1300年続く憧れの地
724(神亀元)年、紀伊国玉津島を行幸(ぎょうこう)した聖武天皇は、玉のように美しく島々が連なる眺望に感動。それまで「玉津島」あるいは「弱浜(わかのはま)」と呼ばれていたこの地の名を「明光浦(あかのうら)」と改め、大切に保存するようにとの詔(みことのり)を出しました。
行幸に従っていた万葉集の代表歌人・山部赤人は、「若の浦に 潮満ちくれば 潟をなみ 葦辺をさして 鶴鳴き渡る」と詠み、いかにこの情景に魅了されていたかを察することができます。
後年、平安時代の歌人・紀貫之が、山部赤人の歌を『古今和歌集』に載せたことを契機に、この地が和歌の聖地としてあがめられ、“和歌の神”が祭られました。やがて「和歌の浦」と呼ばれるようになったのです。
戦国時代、紀伊国を統一した豊臣秀吉は、岡山(虎伏山)に築城。和歌の浦にちなんで「和歌山城」と名付けたのではないかと推察されています。その後、紀州藩主となった徳川家は和歌の浦に「紀州東照宮」を建立、「和歌祭」を挙行し、代々にわたって和歌の浦を保護しました。
その唯一無二の美しい風景は、江戸後期には日本三景の一つに数えられ、昭和には新婚旅行先の人気1位に輝くほど。2017年、「絶景の宝庫 和歌の浦」として日本遺産に認定され、今に至ります。
2024年秋に記念大祭を開催 行幸や和歌会の再現など
聖武天皇が和歌の浦を行幸してから、2024年でちょうど1300年。大きな節目の年を迎えるにあたり、地元有志、岸本周平和歌山県知事、尾花正啓和歌山市長、各大学教授らによって「和歌の聖地 和歌の浦1300年記念大祭実行委員会」が発足。すでに2023年9月23日にキックオフ・シンポジウムが行われ、2024年秋には和歌の聖地を輝かせる記念大祭などが行われます。
行幸行列や和歌会の再現、和歌の浦を象徴する景観の再生と創造、まち歩きイベント、県下小学校での和歌学習カリキュラムの作成、著名人・オピニオンリーダーによる普及と啓発、シンポジウムのシリーズ開催などが企画されています。
参加者募集中!
令和の熊野詣
「熊野古道リレーウォーク紀伊路」日程
大阪市から和歌山県みなべ町までの熊野古道紀伊路を、8回に分けて歩きます(第1回は実施済み)。参加者は白装束を着用し、語り部ガイドが同行。各回とも地元ならではの「おもてなし」が用意され、弁当のオプション販売も。参加費は1回あたり2000円。定員は100人(第3回と第5回は80人)。各回の11日前まで受け付け中。詳細は下記のホームページで。事業主催は和歌山県。
第2回(和歌山市)
開催日/1月13日(土)9:30~(約7km)
場所/布施屋駅~伊太祈曽駅
旧中筋家住宅など昔の面影を残す和佐地区の町並みをめぐり、伊太祁曽神社へ。比較的平たんな道をのんびり歩きます
第3回(海南市)
開催日/1月20日(土)9:30~(約6.1km)
場所/海南駅~所坂王子~海南駅
熊野の入り口とされた海南から、藤白坂・拝ノ峠を越えるルート。古道最初の難所ともいえる藤白坂は往時の趣きが残ります。帰りは海南駅までバス移動
第4回(有田市~湯浅町)
開催日/1月28日(日)9:30~(約7km)
場所/紀伊宮原駅~湯浅駅
有田川北岸の宮原から有田川を渡り、糸我峠を越え、熊野古道の宿場としてにぎわった湯浅へ。湯浅の古い町並みなどが見どころ
第5回(湯浅町~広川町~日高町)
開催日/2月10日(土)9:30~(約12km)
場所/湯浅駅~原谷付近~紀伊内原駅
紀伊路最大の難所・鹿ヶ瀬峠を過ぎたあたりは、石畳道や茶屋跡、墓石群を見ることができ、古道の雰囲気がたっぷり。帰りは紀伊内原駅までバス移動
第6回(日高町~御坊市)
開催日/2月17日(土)10:30~(約11.5km)
場所/紀伊内原駅~西御坊駅
安珍清姫で有名な道成寺に立ち寄り、日高川の流れを眺めながら岩内王子へ。日高平野の丘陵地を歩く平たんな区間
第7回(御坊市~印南町)
開催日/2月25日(日)9:30~(約15km)
場所/西御坊駅~切目駅
日高川を渡り、紀伊水道の雄大な風景を眺めながら進みます。切目王子に到着し、うっそうとした林の間は神秘的
第8回(印南町~みなべ町)
開催日/3月2日(土)9:30~(約13km)
場所/切目駅~南部駅
切目中山王子から榎木峠を越えると、海の見える丘陵地を進みます。岩代王子を過ぎたあたりから梅林が広がり、そこを抜ければ熊野古道随一の景観
問い合わせ | 073(441)2424 和歌山県観光振興課 |
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