身近な地域の歴史をから“世界”が見える
和歌山大学教育学部の海津一朗教授のほか、大学や高校の教員、博物館の学芸員など地域史を研究する専門家16人が執筆した「世界史とつながる日本史~紀伊半島からの視座」が、4月30日にミネルヴァ書房から発刊されました。2016年春に、海津教授の呼びかけで「紀伊半島世界史研究会」が発足。同会が約2年にわたって研究し、16人がそれぞれの専門分野を執筆。海に突き出た紀伊半島が、古い時代から諸外国との交流の舞台となり、世界とつながってきた26の歴史エピソードを検証し、書き起こしています。
古くは、秦の始皇帝の命を受けて不老不死の薬を求めてやってきた徐福、和歌山市の大谷古墳で発見された馬具が示す大陸とのつながり。中世では、種子島に伝わり紀州で発展した鉄砲が朝鮮へ伝来すること、また近代には数々の外国船が紀伊半島を訪れ、エルトゥールル号に知られるように海難事故も多発したこと…など。
「このように、紀伊半島が日本でも先駆け的に世界とつながっていることを伝える歴史的な事象が、非常にたくさんあるんです」と話す海津教授。「これら紀州の歴史を研究すると、日本史の枠を越え、世界史との接点がよく見えます。さらに、紀州と世界との関わりが、日本史上の節目に大きな役割を果たしていることも分かります」とも。
学習指導要領の改定により、2022年度には高校に日本史と世界史が融合した「歴史総合」が必修科目として新設されます。「まさに、紀州史を見れば、日本史と世界史の接点となる事柄がたくさんあり、世界の中の紀州、そして日本を考えるきっかけになります」と海津教授。「歴史教育に携わる人にはもちろん、地元和歌山の人たちに、身近な地域からつながる世界の歴史を知ってもらえれば」と話します。
同書は時代順に26章で構成、巻末には紀州・日本・世界を見比べる年表もまとめられています。和歌山市の「宇治書店」や「宮脇書店和歌山店・ロイネット和歌山店」などで販売されています。
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