新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための緊急事態発令以降、私たちの生活環境は大きく変化。そんなときこそ、もう一度生活のリズムを見直すことが大切です。東京医療保健大学・和歌山看護学部長の八島妙子教授に話を聞きました。
規則正しく、メリハリのある生活が大切
家の中で過ごす時間が増えると、規則正しい生活を心掛けていても、少しずつ生活リズムが崩れてしまいがち。生活リズムの崩れは不眠など健康問題にも影響し、特に高齢者は注意が必要です。
東京医療保健大学・和歌山看護学部長で、老年看護学を専門とする八島妙子教授(和歌山市東坂ノ上丁、写真)は、「私たちの脳内には、睡眠・覚醒、体温、血圧、ホルモン分泌など、体内のリズムを刻む″体内時計”と呼ばれるものがあります(視交叉上核=しこうさじょうかく・右図)。そして、一定の生活リズムが体内時計の動きをスムーズにするとされています」と説明します。
しかし、人間の体内時計はきっちり24時間刻みではないため、毎日リセットすることが必要。夜更かしや朝寝坊など、いつもと異なる生活を何日も続け、リセットしないままでいると、体内時計にずれが生じてきます。そうすると、不眠、食欲の低下、元気がなくなるといった状態に…。八島教授は「規則正しい生活は、体内時計を正確に働かせ、心身の不調を安定させるためにも重要です」と話します。
″分かってはいても、一度リズムが乱れてしまうと、元に戻すのが難しくて”と感じている人も少なくないのでは。
体内時計をリセットするには、起床後すぐに太陽の光を浴びることが望ましいといわれています。八島教授は「朝の光には、体内のリズムを24時間刻みにする働きがあるとされています。朝起きたらまず、カーテンや窓を開けて太陽の光を浴びましょう」とアドバイスします。
また、起床・就寝、食事、入浴など毎日行ういくつかの活動は、時間を決め、できるだけ同じ時間帯に行うことも生活リズムを整える上で大切です。夜なかなか眠つけなかったり、深夜に目覚めてしまったりするときは朝の散歩を、お年寄りなどで外に出るのが難しい場合は窓際での日なたぼっこなどを生活の中に取り入れることで、体内時計がリセットされ、良質な睡眠につながるとも。
八島教授は「規則正しく、メリハリのある生活を送るためには、ちょっとした心掛けが必要です」と、自己管理のポイントについて紹介(左記参照)。その上で、「一気に戻そうとすると負担になることも。まずはできることから少しずつ進め、リズムを整えていきましょう」と呼び掛けています。
則正しい生活を送るためのポイント規
・自身で毎日決まって行う日課を設定する
・自分に合った起床・就寝時間を決め、睡眠のリズムを保つ
・毎日、一定時間を屋外で過ごす
・外に出られなくても、少なくとも1日約2時間は窓際で過ごす(朝の光を浴びる午前の早い時間帯がおすすめ)
・毎日、同じ時間にいくつかの活動をする
・毎日、同じ時間帯に運動をする
・毎日、同じ時間に食事をする
・人とのコミュニケーションの機会を持つ
・昼寝は30分以内に抑え、午後3時までに
・夜間にパソコンやスマートフォンなどの光を浴びるのを避ける
国際双極性障害学会、光療法・生物リズム学会「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行下におけるこころの健康維持のコツ」より
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