リノベーションをキーワードに 変わり始めた中心市街地
- 2015/2/5
- フロント特集
閉店したテナントのシャッターが目立つぶらくり丁をはじめ、空洞化が深刻な問題となっている和歌山市の中心市街地。ここにきて新たな動きが出てきました。市内外から集客施設を持ってくるこれまでの活性化策とは異なり、今あるものを活用して新しいものを生み出す創造型のまちづくり。市民の手でまちを変えようとしています。
原動力はリノベーションスクール
エリアの魅力を高めてにぎわいを
北九州市小倉北区での成功事例をモデルに、和歌山市が平成24年度から取り組んでいる「遊休不動産再生活用推進事業」。本町・京橋周辺の空きビルや店舗を活用して、雇用と産業を生み出し、エリアの魅力を高めることを目的とした新たなまちづくりの手法ですが、その成果が形となって現れ始めています。
同事業は、従来の行政主導のまちづくりではなく、市はきっかけを提供するだけで、実際に動くのは市民。その主軸となっているのが「リノベーションスクール」です。全国で活躍しているまちづくりの専門家と公募で集まった市民らが一緒に、実在する物件の事業計画を練って不動産オーナーに提案するというもの。これまで7物件について検討され(左上参照)、その実事業化第1号として農園レストラン「石窯(がま)ポポロ」が2月8日(日)にオープンします。
さらに、リノベーションスクールをきっかけに誕生した、完全民間型のまちづくり会社「サスカッチ」も、「つくるカフェ」を開設。また、「ハウスブルーネ」も、当初のプランとは異なりますが、まちづくりに関心の深い人が自ら移り住み、来春、カフェを開業させる予定です。
まち歩きが楽しくなるユニークな発想
これまでになかった斬新な店舗が続々と
まちなかの遊休不動産を利用したさまざまな展開が検討されています。実現化に向かって進んでいるものもあれば、まだ“未来予想図”のものもありますが、プランはワクワクするものばかり。その現状を紹介します。
「芸術家や手作り作家などが集う、かつての商店街とは違う新しいまちになっていけばと思っています」。無農薬野菜の栽培や食育の推進に取り組み、「石窯ポポロ」を運営する「にこにこのうえん」(和歌山市府中)の吉川誠人理事長は話します。
吉川さんは、自らの意思で第1回リノベーションスクールに参加。ぶらくり丁内の「ポポロビル」の再活用方法について検討する「ユニットA」で、クラフト工房や石窯で焼くピザなど、ゆくゆくはこんな店ができればと温めてていた構想を発表。その可能性を探るため昨年5月と10月、手作りとロハスをテーた「ポポロハスマーケット」を開催したところ、盛況に終わり出店が確定しました。
所有者の都合で店舗の場所は、「ポポロビル」近くの「服地の店みきや」跡に変わりましたが、吉川さんを中心とするスクールのメンバーらでまちづくり会社「紀州まちづくり舎」を立ち上げ、開業準備を進めてきました。
「今後は物件の所有者と出店者を仲介したり、店舗改装や運営についてもアドバイスしていければと考えています」。吉川さんの脳裏にはしっかりとしたまちなかのビジョンが描かれています。
間もなくOPEN
★ つくるカフェ1号室
(北ぶらくり丁会館2階1号室)
カフェをやりたいなと思っている主婦や、バーをやってみたいと考えている人などにスペースを提供。お店の営業スタイルはその人しだい。調理器具やグラス、食器類などは自由に使えます(食材は各自で用意)。ワークショップや少人数のパーティーなどにも利用でき、サスカッチ主催のイベントも多数開催。
運営 | サスカッチ |
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営業時間 | 応相談 |
料金 | 2時間2000円(キッチンを使う場合は2時間4000円) |
住所 | 和歌山市中ノ店北ノ丁22 |
問い合わせ | ssqtch@ssqtch.jp facebookで「サスカッチ」を検索 |
2/8(日)OPEN
01 石窯ポポロ
(服地の店「みきや」跡)
ピザなど“石窯料理”を中心に、無農薬野菜や地元の新鮮な食材をふんだんに使った料理を提供する農園レストラン。手作りパン、有機野菜の販売なども。また、アーケードで「ポポロハスマーケット」を月1回定期開催していく予定で、「空き店舗で何かお店をしたいと思ってくれる人が集まれば」とも。
運営 | にこにこのうえん |
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営業時間 | ランチ午前11時~午後2時、カフェ午後2時~5時、ディナー午後5時~11時 |
住所 | 和歌山市本町1ノ27ノ1 |
問い合わせ | 090(5652)4023 ※開業後固定電話開通予定 |
居住中 来春カフェOPEN
02 ハウスブルーネ
(和歌山市福町)
市堀川沿いの水辺の立地を生かして、もともとは、1階の3室をぶち抜き、スイーツショップを誘致する計画でしたが、改修コストや法律上の問題で断念。建物を気に入った借り主が3室を借り、内装や設備を取り替えて1室は居室、1室をカフェスペースに(来春オープン予定、現在はリビングとして使用)、残り1室は書斎として利用しています。
リノベーションスクールで検討された事業計画
03 呉服店「えり弥」跡
(和歌山市本町)
市堀川沿いの水辺の立地を生かして、もともとは、1階の3室をぶち抜き、スイーツショップを誘致する計画でしたが、改修コストや法律上の問題で断念。建物を気に入った借り主が3室を借り、内装や設備を取り替えて1室は居室、1室をカフェスペースに(来春オープン予定、現在はリビングとして使用)、残り1室は書斎として利用しています。
04 ニューリチャードビル
(和歌山市万町)
シェアキッチン「プラグ」、コワーキングスペース「コンセント」が入居するビルの3階を「ブックバー」にできないかと模索中。図書館とバーを組み合わせた新しいスタイルで、利用者らが持ち寄った本を、お酒を飲みながらゆっくり読める空間に。
05 ユタカビル
(和歌山市新通)
格安航空会社(LCC)の就航により、和歌山を訪れる外国人観光客が増加。そこに目をつけ、バックパッカーらが気軽に宿泊できる「ゲストハウス」を開設予定。現在住んでいる人がいるフロアはシェアハウスとしての活用法を考案。
06 SYビル
(和歌山市六番丁)
ビジネス街に位置する居酒屋「三代目」が入るビルの3~5階を、20~30代をメーンターゲットとしたローコストのシェアオフィスにする計画。異分野で活躍する人の交流に。フリースペースやレンタルデスク(コワーキングスペース)なども設置予定。開業に向け準備中。
和大生もまちづくりに協力
学生リノベ団体「リプランタン」
第1回リノベーションスクールに参加、協力した和歌山大学の学生4人が、学生の力でリノベーションを推進してまちづくりに貢献できないかと昨年4月に「リプランタン」を発足。研究室の壁紙を貼ることから始まり、昨夏、田辺市の扇ケ浜で、コンテナを塗装して海の家を経営。さらには、和歌山市内の賃貸マンションのオーナーから「学生に住んでもらえるDIY賃貸にしたい」と相談を受け、コミュニティースペースなどをプロデュース。「今、リノベーションでまちが動こうしています。まだまだ身近なDIYが中心ですが、まちが元気になるような関わり方をしていければ」とメンバーの赤塚直人さん。現在9人で活動中。