わすれられないおくりもの

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続きの仕事を黙って
引き受けてくれた仕事仲間

「おばあちゃんのことがかいてある本を見つけたよ」と1年生の長男が差し出したのは、『わすれられない おくりもの』(出版=評論社、スーザン・バーレイ/作・絵、小川仁央/訳)。その日は小学校に入学して初めての図書の貸し出し日でした。

大好きなアナグマが亡くなり、友人たちは悲しみに包まれます。けれど、やがてみんなはアナグマの残してくれたものの豊かさに気付くのです。

「みんなだれにも、なにかしら、アナグマの思い出がありました」と、長男が大きな声で読んでくれました。

入学式を見ることなく、母は3月に亡くなりました。62歳でした。「余命1年です」という医師の言葉が魔法のように、みるみる体調が悪くなり、入院してからちょうど1年後のことでした。

自由業の私たち夫婦に有給休暇はありません。定収入は編集料と原稿料。「仕事を休んで看護」は夢のまた夢。2歳の下の子を連れて病院へ通い、私はそこで仕事をしました。

付き合いの長いデザイン会社のKさんが校正刷りを抱えて足しげく病院に通って来てくれました。2月に入り、医師が診察後に私を見て首を横に振ったのをきっかけに、抱えていたすべての仕事を手離しました。ライター仲間や先輩の編集者がギャラも聞かず、都合も言わず、黙って続きを引き受けてくれて、感謝で胸があふれ、泣きました。

3月11日、東日本大震災の日から4年を迎えます。震災以後、保育所や小学校で3月には必ず『ラーメンちゃん』(出版=絵本館、長谷川義史/作・絵)を読んでいます。長谷川さんが宮城県石巻の子どもたちを励まそうと描いた手作り絵本です。

名前なりきよ ようこ
プロフィル絵本編集者として勤務後、渡欧。帰国後フリーに。
保育所や小学校で読み聞かせを25年以上続けている。絵本creation(編集プロダクション)代表

子育て・教育

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