印象的な銀世界に心を重ね
絵本の中で雪と遊ぶ
「いま日本にいます。●日か●日の午前10時、例の場所で」とメールが届き、Jちゃんの帰国を知ります。お誘いはいつも突然で、こっちの都合はおかまいなし。それでも段取りをつけ、嬉々(きき)として出かけて行くのは、彼女が魅力的なせいでしょう。
高校の同級生だったJちゃんは、20歳をちょっと過ぎた時に彼を追いかけてカナダへ旅立ち、そこで結婚して子どもを2人産みました。子育てをしながら現地の銀行に勤め、不動産販売の資格を取って起業し、カナダ国籍も取得しました。
しかし仕事が不況となるや、すぐさま日本の大学に売り込んで雇ってもらい、3年前に再びカナダに戻るまでの8年間、日本で働きました。日本にいる間は、毎朝早起きして中国語を学んでいました。勤勉で前向きでパワフル、そして面白い人です。当然ながらどこから見ても日本人ですが、「温泉に行こう」と誘うと、「ノー、私はカナダ人」と速攻で断られます。
待ち合わせた日は各地で雪の被害が伝えられ、強風が吹き荒れていました。それなのに「暑い」とジャケットを脱いだJちゃんは、薄手の半袖ワンピース姿。着ぶくれしたわが身と比べながら、「ああカナダ人だ!」と。
地球温暖化が加速する昨今、とりわけ関西ではなかなかお目にかかれない雪ですが、雪の降らない冬は絵本の中だけでも、雪が降ったときには必ず取り出して読みたいのが『ゆきのひ』(出版=偕成社、エズラ・ジャック・キーツ/文・絵、木島始/訳)です。
コラージュ(貼り絵)にゴム印や油彩を合わせた表現方法で、信号や木に積もる雪、棒で引いた線、点々と続く足跡、雪の結晶などの銀世界を印象的な色と構図で描きます。読者は雪にわくわくする黒人の少年・ピーターに心を重ね、いっしょに雪と遊びます。感情移入しすぎて、ポケットのゆきだんごが消えてしまったときには、思わず「あ〜あ」と…。
毛糸の手袋で雪を受けたら、雪の結晶を見ることができます。知っていましたか?
名前 | なりきよ ようこ |
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プロフィル | 絵本編集者として勤務後、渡欧。帰国後フリーに。 保育所や小学校で読み聞かせを25年以上続けている。絵本creation(編集プロダクション)代表 |