そこには“タダ”ならぬ価値がある イマドキ図書館の利用法
- 2020/6/4
- フロント特集
新型コロナウイルスの感染拡大により、全面開館を見合わせていた和歌山市民図書館(和歌山市屏風丁)と図書館機能を有する市民交流施設「海南nobinos(ノビノス)」(海南市日方)がグランドオープン。図書館は“静かに本を読むところ”“学生が勉強する場所”というのは一昔前の考えのようで、イマドキの図書館はBGMが流れ、滞在型がキーワード。これからは、レジャー感覚で“なんとなく図書館に遊びに行く”時代です。
民間運営の“図書館らしくない図書館”
和歌山市と海南市にほぼ同時オープン
老朽化により耐震工事などの整備が必要だった和歌山市民図書館は、南海電鉄和歌山市駅直結の複合商業施設「キーノ和歌山」の隣に移り、6月5日(金)にオープン。一方、海南市役所の庁舎移転に伴い、その跡地に、地域のにぎわい創出のためにつくられた市民交流施設「海南nobinos」は1日に開館。こちらは、かつて市庁舎にあった海南市児童図書館の機能を大幅拡充した「海南図書館」を中核施設とし、今年3月に閉館した海南市民会館の機能も併せ持ちます。
どちらの“施設”も市の新しいランドマークとして注目を浴びていますが、果たして皆さんの図書館への期待度、関心度はどれくらいでしょうか? というのも、総務省統計局の「2016年度社会生活基本調査」によると、和歌山県民の「趣味としての読書率」は、全国最下位という結果が出ていて、 日常的に図書館を利用している人がそう多くないことが推測されるからなのですが…。
しかし、テレビや雑誌でたびたび話題になる“図書館らしくない図書館”が、2館も同時期に和歌山にできたと聞けば、ちょっと興味が湧きませんか?
そこには、カフェ(スターバックス)があり、雑誌やマンガ、小説などもちろん本は読み放題、Wi―Fi(ワイファイ)はフリーで使え、子どもは遊具で遊べて絵本が読め、声を出しても叱られることもなく、おまけに託児施設も。“タダ”ならぬ価値のある夢のような空間(飲食や託児は有料)は、まだまだコロナ禍で利用に一部制限もありますが、上手に使ってママもパパも子どもも日常の息抜きに!!
遊べる滞在型図書館の仕掛け
楽しむ、学ぶ、くつろぐ…
幅広いターゲットに対応
和歌山市民図書館を運営するのは、カルチュア・コンビニエンス・クラブ。「公共図書館の運営に携わるのは、和歌山市で6館目ですが、建物規模も蔵書冊数も、人口規模もナンバーワン。われわれの期待も大きい」と、和歌山プロジェクトのリーダー・山本剛揮さんは話します。
複合商業施設「キーノ和歌山」と一体開発され、市内外の老若男女の利用が見込まれることから、親子連れから学生、会社員、観光客まで幅広いターゲットのニーズに対応。1階には、観光案内や物産・書籍販売のコーナーがあり、2~4階には、中高生に向けて情報を発信する「ティーンズコーナー」や、講演会などにも利用できる「多目的ルーム」、和歌山市の地域子育て支援拠点施設「キッズステーション」などが配置されています。学習室も静かに集中するサイレントスペースと、パソコンが使えるフリースペースがあって、使い勝手が良さそう…。
最大収蔵数は60万冊、その約半分が開架書架に並び、特に2階の一般書は従来の図書分類ではなく、独自の「ライフスタイルジャンル」で配架されているのが特徴で、「書店と同じ感覚で本が探せて、“立ち読み”をしても怒られません(笑)」と。
屋上テラス
紀の川、和歌山城が広がる屋上テラス。芝生広場は出入り自由。屋上キッチン完備で今後はイベントも
一般書フロア
閲覧席数は525席。1階の全集が並ぶスペースと2階の一般書のフロアにはゆったりソファー席もあり、落ち着いた雰囲気の中、のんびり読書が楽しめます
書籍・物産販売
「蔦屋書店」がセレクトした和歌山の名産品はお土産に最適。書籍は、話題のビジネス書、雑誌などがそろい、スタイリッシュな雑貨、文具類なども取り扱っています
有吉佐和子文庫
和歌山が誇る作家・有吉佐和子のコーナー。著書に触れられ、著者を紹介する特集展示も
こどもとしょかん
絵本、児童書、紙芝居も。「えほんの山」の中には「本のどうくつ」もあるので、入口を探してね
学習室
サイレントルームではお静かに! オープンスペースはパソコンが利用できるよう電源も完備
プレイスペース
さまざまな遊びや学びが体験できます。隣の「もぐもぐスペース」は、持ち込み飲食OK
フロアガイド | |
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屋上 | 芝生広場/屋上キッチン |
4F | こどもとしょかん(絵本・児童書・対面朗読室)/プレイスペース/もぐもぐスペース/キッズステーション |
3F | 図書(総記・哲学・宗教・歴史・科学・医学・薬学・産業・芸術・言語・参考図書・郷土資料など)/移民資料室/学習室 |
2F | 図書(趣味・小説・文学・ティーンズ・新聞・雑誌など)/有吉佐和子文庫/多目的ルーム |
中2F | 駐輪場 |
1F | 図書(全集)/蔦屋書店/スターバックス/観光案内 |
和歌山市民図書館 | |
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蔵書 | 約50万冊(うち開架約30万冊) |
閲覧席数 | 閲覧席525席/学習席145席 |
図書貸し出し | 15冊2週間 |
カフェ | スターバックス |
書籍販売 | あり(蔦屋書店) |
電子機器貸し出し | タブレット(無料、利用できるのは1時間) |
無料Wi-Fi | あり |
キッズステーション (一時預かり) |
対象/未就園児(一時預かりは2日前までに要予約) 時間/午前10時~午後4時半(火曜定休、祝日の場合はその翌日) 月~金曜1時間800円(以降30分ごと400円)、土・日曜、祝日1時間1000円(以降30分ごと500円) ※別途初回年間保険料300円必要 |
アクセス | 和歌山市屏風丁17(南海和歌山市駅直結) |
連絡先 | 073(432)0010 |
開館時間 | 午前9時~午後9時 |
休館日 | 無休 |
駐車場 | 南海和歌山市駅駐車場を利用 ※図書館利用者は1時間無料(以降30分200円) |
駐輪場 | 2時間まで無料 (以降、1回150円) |
目標年間来館客数 | 100万人 |
延べ床面積 | 7597.16㎡ |
運営 | カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC) |
総工費 | 約40億円 |
※キッズステーションは現在、電話相談だけ実施073(402)0727
楽しいから図書館に行く
面白いから本を手に取る
「海南nobinos」は、500館以上の公共図書館を手掛ける「図書館流通センター」など3社で組織する「TRC海南」が運営。「当施設の使命は、空洞化が懸念される海南市の中心市街地ににぎわいを創出すること。これまで海南市には2つの図書館がありましたが、ごく一部の人にしか利用いただけていなくて…。なぜなのか、“図書館=静かに本を読む場所=楽しくない”というのが幼少期に形成されてしまうからではないかと。だから、“面白い場所に本があれば手に取ってもらえるのでは?” という逆の発想で、思い切ったチャレンジをした海南市の取り組みは素晴らしいと思います」と、利用促進責任者の谷口義彦さんは話します。
防災の観点から1階は駐車場、2~4階の限られた空間を上手に使って各施設が配置されています。図書は専門書を扱わず、蔵書のほとんどが開架、中でも開架書庫に5万冊の絵本がずらりと並ぶのは全国でもトップクラスだとか。「絵本、児童書のフロアは声を出してもOKなので、気軽に遊びに来てください。あと、館内の椅子にはすごくこだわっています。座り比べてお気に入りの一脚を見つけて!」とのこと。
メインライブラリー
大人向けの一般図書フロア。テーブル席で読書を楽しむのもよし、窓側のラウンジチェアで外を眺めながらぼーっとするのもよし。思い思いの“自分時間”を満喫して
えほんのライブラリー
クマのクッションの座り心地が良すぎて…。本棚は子どもがぶつかってもケガしないように柔らかな素材で
学習席
吹き抜けに挟まれ、集中力が高まりそうな空間。学校帰りにここで宿題を終わらせましょう
多目的室&会議室
ダンスや演奏の練習、フラワーアレンジメントなどの創作活動に利用できる多目的室、グループ学習に利用できる会議室を完備。壁がボルダリング、机が卓球台のユニークな部屋も
こどものライブラリー
曲線空間はまるで迷路のよう。「読書の森」は高さが子どもサイズで寝転がったり、壁にもたれたり…。他にも秘密基地やブース席があり、カードゲームなども楽しめます
広場
外には芝生が広がり、滑り台、鳥の巣のようなネット遊具で遊べます。ルーフがあり、イベントなども開催
ノビノスパーク
雨でも遊べるスペース。子どもの感性を伸ばす玩具がたくさん。五感を刺激して感性豊かに
ノビノスホール
最大254席のホール(可動客席は収納可能)。音楽練習室は楽器の貸し出しもあり
フロアガイド | |
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屋外 | ノビノスルーフ/遊具/芝生広場 |
4F | メインライブラリー(小説・実用書・新聞・マンガ・ライトノベルなど)/学習席/会議室/ITラボ |
3F | こどものライブラリー(児童書)/読書の森/秘密基地 |
2F | えほんのライブラリー(絵本)/マガジンライブラリー(雑誌)/ノビノスホール/多目的室/ギャラリー/ノビノスパーク/託児室/スターバックスコーヒー |
1F | 駐車場/駐輪場/保護者待機室/音楽練習室 |
海南ノビノス | |
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蔵書 | 12万6595冊(うち開架12万冊0853冊、絵本・児童書・紙芝居7万4029冊) ※5月末日現在 |
閲覧席数 | 450席 |
図書貸し出し | 10冊2週間 |
カフェ | スターバックス |
書籍販売 | なし |
貸会場 | ノビノスホール、多目的室、会議室、音楽練習室(すべて有料、料金はホームページhttps://kainan-nobinos.jp/参照) |
電子機器貸し出し | パソコン、タブレット、デジタルカメラ、ビデオカメラ (無料、利用できるのは2時間) |
無料Wi-Fi | あり |
託児施設 (一時預かり) |
対象/6カ月~6歳(予約不可) 時間/午前9時半(受け付け9時15分)~午後4時半(3部制、木曜定休) 海南市民2時間200円、海南市民以外2時間400円 |
アクセス | 海南市日方1525-6(JR海南駅から徒歩約7分) |
連絡先 | 073(483)8739 |
開館時間 | 午前9時~午後9時半 |
休館日 | 12月29日~1月3日 |
駐車場 | 100台 (2時間無料) |
駐輪場 | 無料 |
延べ床面積 | 7850.23㎡ |
運営 | TRC海南(図書館流通センター・大揚興業・明日香) |
総工費 | 約29億円 |
コピー | A1まで対応(1部10円から) |
※託児室、ノビノスパークは当面休止、館内の密集を避けるため入館制限などする場合あり