いちにちにへんとおるバス

※現在、出版社に在庫がありません。図書館などで閲覧してください

※現在、出版社に在庫がありません。図書館などで閲覧してください

人間はやさしさでできている
そう信じたくなる一冊

以前、最寄り駅から始発電車に乗ったことがありました。午前5時過ぎの晩秋のホームは薄暗く、乗り込む人もまばらでした。一度閉まったドアが再び開いたのは、乗り遅れた乗客のために。その人が乗り込むのを見届け、車掌さんの合図で電車がゆっくりと動き出しました。車両を次々と見通せるほど車内はガラ空き。向かい側に座っていた人が「どこへ行くの?」と声をかけてくれたのがきっかけで、旧知のように話し込みました。

そんな記憶を残したまま、つい先日、久しぶりに始発電車に乗りました。私を含め、働き方が変わったせいでしょうか、始発だというのに座席は埋まり、車内は活気に満ちていました。ラッシュ時ほどではないにしても、昼間と変わらない光景です。当然ながら、見知らぬ人同士で話すこともありません。

「バスは二へんしかとおらん。あさ、むらからまちへ、そしてゆうがた、まちからむらへもどってくるだけや」で始まる、『いちにちにへんとおるバス』(出版=ひかりのくに、作/中川正文、絵/梶山俊夫)は手書きの文字が絵の一部のように配されて味わい深く、紡がれるお話が何ともあたたかな作品です。

朝、紅葉の山道を走るバスに乗ったのは銀行員、郵便配達、市場へ魚を買い出しに行くおばはんと、途中の峠で乗って来た見かけない男の子。お金を持っていない男の子の代わりに、おばはんがバス代を払ってあげます。

夕方、バスは朝に乗せた三人と、結婚式をあげるために乗り込んだ花嫁の一行を村へと運びます。途中、雪が降り積もって走れなくなりますが、不思議なことにいつの間にかバスの通るところだけ、雪かきがしてあります。翌朝おばはんに届いた手紙には、男の子と、雪かきをしてくれた人たちの正体が‥。

11月に暦が変わり、紅葉の話題が出始めると決まって読みたくなる絵本です。ほっこりした読後感が、やさしい気持ちにしてくれます。

名前なりきよ ようこ
プロフィル絵本編集者として勤務後、渡欧。帰国後フリーに。
保育所や小学校で読み聞かせを25年以上続けている。絵本creation(編集プロダクション)代表

子育て・教育

関連キーワード

 

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

おすすめ記事

  1.  和歌山県の温泉といえば、白浜温泉、川湯温泉などをイメージしがち…。いやいや、和歌山市内にも穴場の名…
  2. リビング和歌山11月16日号「デジタル時代だからこそ 手書きに思いを込めて」
     年末といえば、クリスマスカードに年賀状、今年は手書きで思いを伝えませんか。若い世代に注目を集める…
  3. “遺言”と聞くと、“老後になってから”と考える人が多いのでは。しかし、遺言は生前対策の一つとして、…
  4. リビング和歌山11月2日号「夜空を鮮やかに彩る伝統美県下唯一の花火製造会社」
     和歌山県のものづくり企業にスポットを当てたシリーズ、「すごいぞ! 和歌山の底力」。今回は、花火作…
  5. リビング和歌山10月26日号「和歌山県、旬の魚を訪ねて漁港巡り ふんわり美味な「わかしらす」」
     「さかなをたべよう!」キャンペーンを今年展開している全国のリビング新聞ネットワーク。今号は、和歌…
リビングカルチャー倶楽部
夢いっぱい保育園

お知らせ

  1. 2024/11/21

    2024年11月23日号
  2. 2024/11/14

    2024年11月16日号
  3. 2024/11/7

    2024年11月9日号
  4. 2024/10/31

    2024年11月2日号
  5. 2024/10/24

    2024年10月26日号
一覧

アーカイブ一覧

ページ上部へ戻る