あまみ・うまみが、ぎゅっと!
「下津蔵出しみかん」の季節です

リビング和歌山2025年1月25日号「あまみ・うまみが、ぎゅっと! 「下津蔵出しみかん」の季節です」

 年末に収穫したみかんを貯蔵庫で熟成させた後、翌年の1月下旬から出荷する「下津(しもつ)蔵出しみかん」。日本のみかん発祥の地であり、日本農業遺産に認定されたシステムで生産されるみかんに注目します。

「日本農業遺産」認定の
下津蔵出しみかんシステム

和歌山市中心部から、車で国道42号を南下すること約30分。海南市下津町に入れば、山の急斜面に作られた段々のみかん畑を目にします。

この地で収穫されたみかんは、各農家の貯蔵庫で熟成された後、「蔵出しみかん」として出荷。1月下旬から3月ごろまで、糖度の高いみかんを購入できるのです。「おいしいみかんを、まだまだ食べたい!」というアナタ、春まで楽しめますよ。

約400年前から現在に至るまで、みかん作りの独自技術が下津の地で継承されています。その功績が評価され、2019年2月に「下津蔵出しみかんシステム」が「日本農業遺産」に認定。この制度は、独自性のある伝統的な農林水産業を営む地域を、農林水産大臣が認定するもの。県内では「みなべ・田辺の梅システム」に続く2例目の快挙でした(現在は県内で4例が認定)。

「下津蔵出しみかんシステム」について、JAながみね しもつ営農生活センター調査役の土谷賢太郎さんに話を聞きました。

段々畑から和歌浦湾を望みます

農業を通じた地域の絆
独自の技術が下津全体で継承

「山の急斜面に天然石が積まれ、段々畑を形成。足場と耕地面積が確保され、生産性が高い農地になっています。頂上の雑木林から、ため池、川、海に至るまで、多様な動植物の生育環境が保全。野生動物が多く集まり、害虫駆除の役割を担わせるなどによって、共生関係を築いています」と、下津特有の農業環境を土谷さんは説明。

確かに下津エリアに入れば、雑木林や果樹が織りなす四季それぞれの景観(ランドスケープ)と、山から海への素晴らしい景色(シースケープ)に魅せられますよね。そこには自然共生の理念もあったとは。

そして特筆すべきは、古くから伝わる「蔵出し技術」。12月初旬から年明けまでに収穫したみかんを、各みかん園にある木造・土壁の貯蔵庫にすぐさま運んで木箱に入れて約1~2カ月の間、熟成させます。とろ~り、まろやかな、糖度の高いみかんに仕上がるのです。

「みかんを貯蔵する際、湿度と気温の安定に細心の注意を払います。みかんの表情を見て、水分が多いようなら貯蔵庫の扉を少し開けて風を入れ、逆に乾燥しているなら土間に水を打つなどで湿度を調整。温度は8度前後から乱高下しないように工夫します。また、みかんを入れる木箱が浅いのも特徴。腐りかけたみかんの発見が容易になるし、木箱下部のみかんが潰(つぶ)れにくいという利点もありますね」

みかんの表情を見て…とはいうものの、長年培われた経験値がないと判断は難しい。土谷さんは下津の農家の強みとして、集落農業を行っている点を挙げます。

「農家同士がコミュニケーションを密にし、集落の畑は集落で守るという意識が高い。親から子への継承だけでなく、下津全体で技術が受け継がれているのです」と力説。

「この持続性の高い農業システムを構築していることが評価され、日本農業遺産に認定されました。現在、世界農業遺産にも認定申請中です。そもそも下津は、みかん発祥の地とされてますし」

木造・土壁の貯蔵庫。下津の各みかん園にあります

貯蔵庫には木箱にみかんが詰められ、じっくり熟成

歴史あふれる柑橘(かんきつ)の里

日本のみかん発祥の地・下津
由来の地を訪ねる

「古事記」や「日本書紀」によると、今から約1950年前の西暦71年に、第11代垂仁(すいにん)天皇の勅命で、田道間守(たぢまもり)が、現在の中国南部からインド方面にあたる常世国(とこよのくに)に渡りました。目的は、不老長寿の霊菓を手に入れること。

かの地で田道間守は、非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)と呼ばれていた橘(たちばな)を得ます。橘はみかんの原種で、その木の実は「菓子」の起源ともされています。

勅命を受けてから10年あまり、田道間守はようやく帰国。しかしながら、垂仁天皇はすでに崩御していました。田道間守公は嘆き悲しみ、天皇の御陵(みささぎ)に橘を捧げ、命が絶えたとのこと。

その橘が、日本で最初に移植された場所といわれる「六本樹(ろっぽんじゅ)の丘」(橘本神社旧社地)。この場所には、田道間守の功績をたたえる碑が建っています。

田道間守が祭られている「橘本神社」
田道間守ののぼり旗も

「橘の根本」との意味から、この地域は「橘本(きつもと)」と呼ばれ、田道間守が土地の守護神として橘本神社に祭られています。現在では『みかん・お菓子発祥の地』とされ、同神社で毎年10月に例大祭「みかん祭り」が盛大に開催。県内外の柑橘業者、果物業者が参拝し、渡御(とぎょ)、獅子舞、餅投げなどが実施されています。

橘が植えられたとされる「六本樹の丘」に建つ碑

このような歴史背景を持つ橘本神社や六本樹の丘を訪ねてから、みかんを味わうのもいいかも。下記の「とれたて広場」や「海南サクアス」のほか、関西から北海道までのスーパーや小売店などで販売されています。

土谷さんは「JAながみね下津総合選果場では、光センサーを通して糖度を判別。超高級、高級、レギュラーの3ランク別に出荷しています。下津蔵出しみかんをぜひ堪能してください」と話します。春までずっとみかんを楽しみましょう。

海南下津マップ

橘本神社

電話 073(494)0083
住所 海南市下津町橘本779
駐車場 あり
こちらで販売中!

農家が直接持ち込む下津蔵出しみかん

1月11日に行われた「蔵出しみかんキャンペーン隊結団式」

普通車240台が停められる大型駐車場を完備

 JAながみねが運営する産直市場。地元農家が朝一番に運んだ新鮮な野菜や果物を購入することができます。自宅用の袋入りから、贈答用の箱詰めされたみかんまで、所狭しと並ぶ姿は壮観。

ファーマーズマーケット とれたて広場
電話 073(487)0900
住所 海南市重根西2-3-5
営業時間 午前9時~午後5時
定休日 水曜、年末年始
HP https://www.ja-nagamine.or.jp/market.html
駐車場 あり

段々畑のみかん山に囲まれた道の駅

食可能なキッズスペースがあり、家族連れでぜひ

海南市PRキャラクター「海ニャン」がお出迎え

蔵出しみかん農家のすぐ近く。果樹産地ならではの多彩な果物が、産直マルシェに並べられています。地元産果物を使ったスイーツや、新鮮な海産物も豊富。フードコートでは、魚介類の定食や丼が人気です。

道の駅 海南サクアス
電話 073(492)1093
住所 海南市下津町小南51-1
営業時間  午前9時~午後5時
※フードコートは午前10時~午後4時(OS)
定休日 年末年始
HP https://sakuas.com/
駐車場 あり

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