不適合の場合は措置をアドバイス
「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」が改正され、今年4月から、建物の省エネ性能について建築士から建築主への説明が義務化されました。同制度について、和歌山県建築士会の建築士を対象にした講習会で講師を務める「S・A設計室」(和歌山市寄合町)の一級建築士・佐原久登さんに解説してもらいます。
「住宅業界で省エネ化が求められるようになったのは、今に始まったことではありません」と佐原さん。法律により建築物の省エネ対策が努力義務とされたのは、オイルショック後の1980年のこと。その後、京都議定書やパリ協定が採択され、温室効果ガス排出量の削減目標が設定される一方、全体のエネルギー消費量の3分の1を占める「業務・家庭部門」のエネルギー消費量は増加。
そうした中、政府は13年に、従来の省エネ基準や地域区分を見直し、建物自体の省エネ性能を示す「外皮性能」と、冷暖房や照明などの設備に関わる省エネ性能を示す「一次エネルギー消費量」の2段階指標を導入。16年には、計算方法などが一部変更され、現行の“次世代省エネ基準(平成28年省エネ基準)”が設けられました。
「あなたが建てようとしている家が、この次世代省エネ基準に適合しているかどうかを建築士が建築主に説明するのが、今回課せられた義務。適合していなければ、性能を確保するための措置、そのためにかかる費用のことなども伝えます」と。ただし、建築主が説明を希望しないという選択肢もあります。「大手ハウスメーカーは、次世代省エネ基準を満たした長期優良住宅が標準仕様ですし、建売住宅もそれを意識して建てられたものがほとんどで、それほど“特別な基準”ではありません。適合させるために初期費用はかかりますが、高気密・高断熱の家は室内の温度ムラが少なく快適で、ヒートショックや熱中症といったリスクも減らせます。さらに、高効率な設備を備えることで光熱費などのランニングコストも下がります」と佐原さんは言います。
昨今は、より厳しい高断熱基準で、再生可能エネルギーを導入するZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)やLCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅の着工数も増えてきています。
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