−第64回−文化財 仏像のよこがお「葛城修験二の宿の大威徳明王像」

西念寺大威徳明王騎牛像(修理前(左)と修理後)

 和歌山市西庄の山中、葛城修験二の宿にあった神福寺から、明治時代初期の神仏分離と修験道廃止によって、麓の西念寺に移された地蔵菩薩立像について、本コラム第43回(2023年6月24日発行号)で紹介しました。この仏像は、近代以降の修理で、厚く鮮やかな彩色が塗られていましたが、修理を行い、平安時代後期に作られた造像当初の姿を取り戻すことができました。

西念寺には、同様に神福寺から伝来し、後世の補修による厚い彩色に覆われながらも、わずかにうかがえる造形から、やはり平安時代後期に造像されたと考えられる大威徳明王騎牛像(きぎゅうぞう)が伝わっています。このたび、地蔵菩薩立像に引き続き修理が施され、その様相を一新しました。

大威徳明王騎牛像は、本体の像高24・0㌢の小像で、ヒノキ材を用いた一木割矧造(いちぼくわりはぎづくり)とし、面部は江戸時代の修理の際に木屎漆(こくそううるし)を盛り上げ、作り直されています。腕や脚などは近代ごろの補作で、今回の修理で新調しています。像が座る牛も優れた出来栄えで、同時期のものと判断されます。牛の背の痕跡から元は台座が取り付けられていたとみられ、復元しています。

修理の大きな成果は像内納入品です。像本体を解体したところ、像内から竹皮に包んだ願文が確認されました。内容は、本像と地蔵菩薩立像(八幡神像)、本尊の秘仏十一面観音像が、修験道の開祖・役小角(役行者)が自ら彫ったものであること、延宝8(1680)年に修理されたこと、その修理を主導したのが西之庄村の「神主」であることが確かめられます。この神主は二之宿の行場を管理していた近隣の木本八幡宮の宮司を代々継承する山本氏でしょう。
江戸時代後期の地誌『紀伊続風土記』でも神福寺の三尊は、「本尊十一面観音、脇士八幡大菩薩、大威徳明王なり。三像共に役行者の作」と記されていますが、そうした伝承はすでに江戸時代前期において語られていたのです。葛城修験の行場の形成と展開の歴史を考える上で、仏像は新たな情報を語りかけてくれています。
(奈良大学准教授・大河内智之)

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