新たな価値を創造する
光の演出のプロフェッショナル

リビング和歌山10月21日号「新たな価値を創造する 光の演出のプロフェッショナル」

 和歌山県のものづくり企業に焦点を当てた「すごいぞ!和歌山の底力」シリーズ。今回は、ガーデンライフスタイルのメーカーであるタカショーを親会社に持ち、さまざまな照明事業を行っている企業「タカショーデジテック」を紹介。「光の演出で人の心を彩る」をビジョンに掲げる同社の設立秘話や、これまでの歩みについて聞きました。

タカショーデジテック代表取締役社長古澤良祐さん

タカショーデジテック
代表取締役社長
古澤良祐さん
矢櫃の海の美しさや暮らしの灯(あか)り、人口減少への危機感など、テーマごとにカラーを変えて表現

地域の問題を提起した企画が
日本空間デザイン賞などで3冠

海に面した山の斜面に、白壁の家々が建ち並ぶ有田市・矢櫃(やびつ)地区。その美しい景色を生かした「照らしちゃる矢櫃 –YABITSU LIGHT UP PROJECT(ライト・アップ・プロジェクト)– 」が、昨年8月に開催されました。

矢櫃地区は、風光明媚(めいび)なロケーションでありながらも交通の面で不便さがあり、過疎が深刻な地域。そんな矢櫃の空き家に光を当てることで、人口減少という地域課題を浮かび上がらせることをテーマに、プロジェクトは企画されました。今もその地域に暮らす住民に配慮し、外部の観客を招かないシークレットイベントとして実施。インスタレーションアートという形で、写真や映像をさまざまなメディアで拡散することにより、景観の美しさとともに、矢櫃地区が抱える課題を広く発信しました。

そして今年、このプロジェクトが、「日本空間デザイン賞2023」の銅賞とサスティナブル空間賞、「第57回日本サインデザイン賞」の銅賞の3賞を受賞。日本空間デザイン賞は、国内外の優秀なデザイナーや卓越したデザイン作品を発掘する、国内最大級のデザインアワードです。今回、応募総数779作品から選出されました。また現在、世界的に権威のあるデザイン賞の一つである、ドイツの「iFデザイン賞」にもノミネートされています。

プロジェクトを行ったのは、“光”に関わるさまざまな事業を行う「タカショーデジテック」(海南市南赤坂)。同社は、2017年から毎年、和歌山マリーナシティを舞台に開催されている「FeStA LuCe(以下=
フェスタ・ルーチェ)」で、イルミネーションを手掛けている会社です。

フェスタ・ルーチェは、これまでの6年間で累計入場者数63万人を突破し、和歌山の冬の風物詩としてすっかり定着した一大イベントです。しかし、代表取締役社長の古澤良祐さんは「実は、イルミネーションなどのイベント事業は、事業全体の10%にも満たないほど」と話します。同社の主体となっている事業や、創設からこれまでのドラマチックなストーリーに迫ります。

毎年異なるテーマのイルミネーションで和歌山マリーナシティを彩り、県内外の多くの人を魅了しているフェスタ・ルーチェ

毎年異なるテーマのイルミネーションで和歌山マリーナシティを彩り、県内外の多くの人を魅了しているフェスタ・ルーチェ

“光の力”を多くの人に届ける、次は世界へ!

早くからLEDに着目し
ガーデン業界で照明を開発

愛知県出身の古澤さんは、大学卒業後イギリスへ留学。帰国後、ガーデン・エクステリアの大手、「タカショー」に入社し、高岡伸夫社長の秘書兼通訳者として海外を飛び回ります。そんな中、当時徐々に実用化が進んでいたものの、まだ発展途上だったLEDに着目。入社2年目、社内ベンチャーとして「タカショーデジテック」を設立。庭づくりの商材だった光を透過する人工大理石とLEDを組み合わせた、新商品「マーベライト」を開発します。

人工大理石LEDタイル「マーベライト」

初めて製造し、リニューアルされながら現在も販売されている人工大理石LEDタイル「マーベライト」。壁や床に設置することで、外構をアーティスティックに演出します

「はじめはスタッフが3人だけ。照明に関する知識がほとんどないままのスタートでした。ガーデン業界にとって畑違いの商品を売ることになったため、売り上げはなかなか伸びず、知識が薄いまま商品を作っていたので、売れてもクレームが多発。社内でも白い目で見られていましたね」と、古澤さんは振り返ります。

事業が難航した原因は、タカショーの取引相手である造園業者と電気業者の分業体制にありました。照明を施工するためには、電気工事士の資格が必要。造園業者はその資格を持たないため、電気業者に施工をまかせており、照明に関する知識や提案力がない業者がほとんどでした。

そこで開発されたのが、12ボルトの「ローボルトライト」です。36ボルト以下、電気工事の資格を必要としない低電圧商品を開発することで、自分たちだけでできるライティングを提案。しかしそれでも、従来の造園業者と電気業者の分業スタイルに劇的な変化を起こすことは難しく、大きく売り上げを伸ばせなかったと言います。

屋外照明事業では、住宅向け、店舗・企業向けに庭のライティングを提案。照明器具の開発・販売に加え、トータルプロデュースも

屋外照明事業では、住宅向け、店舗・企業向けに庭のライティングを提案。照明器具の開発・販売に加え、トータルプロデュースも

国内外に自社工場を持つ同社。製造から組み立てまで、すべての工程を自社で行っています

国内外に自社工場を持つ同社。製造から組み立てまで、すべての工程を自社で行っています

LEDサイン事業では店舗や企業のロゴなど、オリジナルLEDサインを制作。デザインや発光の仕方など細部にこだわって提案

LEDサイン事業では店舗や企業のロゴなど、オリジナルLEDサインを制作。デザインや発光の仕方など細部にこだわって提案

エクステリアやガーデン、商業施設など、その空間に合った照明器具を設計します

エクステリアやガーデン、商業施設など、その空間に合った照明器具を設計します

照明のプロを育成する
ライティングマイスター制度

苦しい時期が続く中で、転機となったのは2010年。「ライティングマイスター」を設立したことから状況は一変します。ライティングマイスターとは、ガーデン・エクステリアライティングのプロのこと。造園業者やインテリアデザイナー、住宅・建築関連の企業に対し、庭照明について基礎から学べる養成講座を、全国の主要都市で開催。古澤さん自らが登壇し、「照明は武器になる」ことを熱く伝えてきました。多くの受講生が、ローボルトを活用しながら照明に関する顧客のニーズに応え、“夜の庭”の提案ができるマイスターに。「プロの庭照明認定店」が全国各地に生まれていく中で、みるみる商品の売り上げが増加。

021年からはeラーニングで年3回実施。これまで、3000社7000人を超える受講者が参加しています(2023年9月時点)。その後、屋外照明施工のスペシャリストを養成する「ライティング施工マイスター」、不具合への対応やメンテナンスについて学ぶことができる、より実践的な講座も誕生しました。

全国各地を訪ねて行ってきた「ライティングマイスター講座」

全国各地を訪ねて行ってきた「ライティングマイスター講座」

古澤さんは、「当社がパーパス(企業としての存在意義)として掲げるのは、“今ある光の入れ替えではなく、今暗い場所に光を灯(とも)す”。なぜそこが暗いのか、問題点を見つけて解決していくのが仕事だと思っています。それが、フェスタ・ルーチェや矢櫃プロジェクトなどの地方創生事業にもつながっています」と。暗いところに光を当てることで、人が集まり、そこに新たな価値や体験が生まれていく。ガーデニングや外構の専門的な事業だけにとどまらず、地域活性を目的にしたプロジェクトを積極的に行う同社の取り組みは、国内外の多くの人の心を動かしています。

今後の展望について、「業績を積み重ねるうち、優秀な仲間がどんどん集まってくれたことで、大手照明企業と戦える技術力やデザイン力がついてきました。これからは“今ある光の入れ替え”にも参入できる」と。また、2024年から世界に向けても進出予定。「海外のパートナー企業と連携しながら、日本文化を伝えられるような新たな商品の開発を企画中です」とも話します。

「今度は何を見せてくれるんだろう」とわくわくするような、柔軟なアイデアと高い実行力を持つタカショーデジテック。今後の躍進から、ますます目が離せません。

11月3日(祝)~2月12日(休)には和歌山マリーナシティで「フェスタ・ルーチェ」が開催。

7回目の開催となるフェスタ・ルーチェ、今年は「ライト・パレード」がテーマ。キラキラ輝く光の中で心踊る体験が待っています!

7回目の開催となるフェスタ・ルーチェ、今年は「ライト・パレード」がテーマ。キラキラ輝く光の中で心踊る体験が待っています!

また、今年11月23日(祝)~翌年2月29日(木)にJR和歌山駅前から和歌山城までの街路樹がイルミネーションで輝く「けやきライトパレード」が初めて行われ、白浜町でも10月28日(土)〜翌年2月29日(木)に「白良浜ライトパレード」が行われます。同社による光の演出を、ぜひ身近に感じてください。

タカショーデジテック

代表者 代表取締役社長 古澤 良祐
設立 2004年
本社 海南市南赤坂20-1
電話番号 073(484)3618
ホームページ https://takasho-digitec.jp/

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