世界遺産登録20周年記念事業「令和の熊野詣」、9月から中辺路で開催
平安の鼓動を感じて
- 2024/8/29
- フロント特集
「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録されて20年。これを記念した「令和の熊野詣」が、9月から中辺路を舞台に行われます。世界遺産の熊野古道を歩いたことがありますか? 初めての人も、これを機に訪ねてみませんか。
熊野御幸の正式な参詣道
もっとも多く王子が残る中辺路
「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録され、今年で20周年を迎えたことを記念して、和歌山県が「令和の熊野詣」を実施。昨年12月、京都市の城南宮(鳥羽離宮跡)で出立式を行い、今年3月までは「令和の熊野詣 熊野古道リレーウォーク紀伊路」として熊野古道紀伊路を歩きたどってきました。来月9月からは、いよいよ聖地・熊野へ! 「令和の熊野詣 熊野古道リレーウォーク中辺路」が行われます。
「『熊野古道』を世界遺産に登録するプロジェクト準備会」の運営委員代表・小野田真弓さんに(写真)、熊野古道の中辺路について聞きました。
「熊野古道は、京都市の城南宮を出発し、淀川を下って、紀伊路、小辺路(こへち)、中辺路、大辺路(おおへち)、伊勢路と熊野に至る長大な参詣道です。世界遺産に登録されて知名度が上がり、海外からも多くの人が訪れるようになりました」と小野田さん。
そんな熊野古道の中辺路は、田辺市から熊野への聖域の入り口とされる「滝尻(たきじり)王子」に続き、熊野三山の「熊野本宮大社」「熊野那智大社」「那智山青岸渡寺」「熊野速玉大社」をつなぐ参詣道。「平安時代から鎌倉時代にかけて、皇族・貴族がこぞってお参りした『熊野御幸』では、中辺路が公式な参詣道(御幸道)として繰り返し利用されました」と小野田さんは話します。
熊野御幸が盛んだったころ、熊野古道には熊野権現の御子神(みこがみ)をまつった王子が点在していました。「熊野古道を歩く人たちは、一つ一つの王子を参拝しながら聖域・熊野を目指しました。中辺路には、この王子や王子跡が数多く残されているのもポイント。道案内の看板や休憩所なども整備されているので初心者でも歩きやすく、熊野古道デビューにもぴったり」
1997年に発足し、熊野古道を世界遺産に登録しようと活動してきた同会。「熊野古道を含む『紀伊山地の霊場と参詣道』は、日本で初めて“道”が登録された非常に珍しい世界遺産。文化庁からの呼びかけではなく、地元から“世界遺産にしたい”と働きかけ、認められた例としても先駆的でした。地元の協力や支援、専門家たちの知恵と技術を駆使して登録された世界遺産の道なので、地元の人たちには誇りを持って歩いてほしいと思います」と、小野田さんは呼びかけます。
同会は世界遺産登録20周年記念として、子ども向けのイベントを企画(下記)。次項では和歌山県が行う「令和の熊野詣 熊野古道リレーウォーク中辺路」を紹介します。
プロジェクト準備会による
「紀伊山地の霊場と参詣道」世界遺産登録20周年記念事業
GO! GO! くまのこどう体験会
和歌山県のイベントで出かけよう
「蟻の熊野詣」を令和に再現
ツアーのポイント
熊野三山を正式参拝
そのほか、各回特別な体験企画が用意されています
小グループ催行
約15人に1人、語り部および安全管理スタッフが同行して案内してくれます
すべてJR和歌山駅発のバスプラン
一部現地集合・解散プランもあり
令和の熊野詣 熊野古道リレーウォーク中辺路 ※各回定員80人
●第1回 9月22日(祝)日帰り
●第2回 10月5日(土)〜6日(日)1泊2日
●第3回 10月19日(土)〜20日(日)1泊2日
●第4回 11月9日(土)〜10日(日)1泊2日
●第5回 12月1日(日)日帰り
●第6回 12月15日(日)日帰り
写真提供 = 和歌山県観光連盟
どれか1回だけの参加も可能です
(申し込み時に満席となっている場合があります)
詳しくは専用サイトで確認を
問い合わせ | 0570(666)155 日本旅行大阪予約センター (午前11時~午後5時 ※土・日曜、祝日も対応) |
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初心者のための
古道歩きのアドバイス
服装
暑くても、半袖・半ズボンは厳禁。自然の道なので、虫に刺されたり、ヘビが出るようなこともあります。長袖・長ズボン、くつ下を履くなど、肌が露出しないように。日よけやケガ予防に帽子も。
マップ
歩くコースの紙製の地図を携帯しましょう。中辺路なら道しるべも多いですが、見失うと道に迷います。スマートフォンは、地図アプリなどが便利ですが、充電がなくなる、落としてしまう…など、想定外のトラブルもあります。
バッグ
両手が空くようにリュックサックを。帽子やリュックは目立つ色にしましょう。道に迷ったり、けがで動けなくなったときなどに見つけてもらいやすいです。上着も白っぽい明るい色で。
靴
中辺路は、一部峠を越える厳しいルートがあるものの、ほとんどは整備が行き届いた歩きやすいコース。履き慣れた滑りにくい靴を選んでください。
そのほかに持っておくと良い物
・ 折りたたみ傘(広げると影が広がり、熱中症対策にもなります)
・雨ガッパ(できれば上下のセパレートタイプ)
・水分・塩分(熱中症予防に)
地震や災害が起きたとき
地震で揺れたら、頑丈な木につかまって姿勢を低くしたり、揺れがおさまるのを待ちます。揺れがおさまったら、足場に注意し、背中のリュックで頭や首を覆って、安全な場所でしばらく様子を見ましょう。登山口や街中に戻ることができたら、カーラジオやスマートフォンなどで情報を収集し、海が近いときは津波の有無などを確認してください。
地元の警察や観光協会の電話番号をメモしておくなど、備えておきましょう。
中辺路とっておき話
近露王子にまつわる花山法皇の話
今年のNKH大河ドラマ「光る君へ」にも登場した花山法皇が、熊野詣の時に、食事をするのに萱(かや)を折って箸にしようとすると、萱から水滴がしたたり、それが赤く見えて「これは血か露(ちかつゆ)か」と言ったことから、近露(ちかつゆ)の地名がつき、箸を折った場所が「箸折(はしおり)峠」となったと伝えられています。
人工林も価値のある文化的景観です
熊野古道を歩いて、熊野の森が植林(人工林)だと驚く人もいますが、紀伊山地の森林景観は、熊野の長い歴史の中で、人々の営みと自然の特異な結びつきを示すユネスコ文化遺産の遺跡「文化的景観」です。
尼将軍や安倍晴明にちなんだ場所
補陀洛山寺から熊野那智大社への道中、市野々王子手前に北条政子が建てたと伝わる「尼将軍供養塔」があり、少し過ぎたところの竹林の風景がとてもきれいです。また、那智山バス停近くに安倍晴明ゆかりの場所もあります。
見どころ多い発心門からの道
発心門王子から水呑王子の間には、お医者さんが多いんです(笑)。例えば、安産の神様とか、歯痛のお地蔵さんとか…。水呑王子の近くには腰痛のお地蔵さんがあります。その先の伏拝王子には、和泉式部が月の障りになってしまったけれど、熊野権現は参拝を許したという、熊野の神々の懐の深さが伺える話が伝わっています。