伝統と革新が織り成す
老舗のパイルファブリック

リビング和歌山2月3日号「 伝統と革新が織り成す 老舗のパイルファブリック」

 全国に誇るものづくりを紹介する「すごいぞ!和歌山の底力」シリーズ。今回は、世界的にも珍しいパイル織物の総合産地、橋本市高野口町にある「妙中パイル織物」が登場します。時代を先取りしながら、受け継がれた技術を駆使してオリジナル製品を生み出し続ける、老舗のものづくりへの情熱とプライドに注目です。

妙中パイル織物 代表取締役社長 妙中正司さん

妙中パイル織物
代表取締役社長
妙中正司さん

衣類、インテリア、車両シート
技術が光る多様な生地の数々

かつらぎ町や九度山町とともにパイル織物の産地として知られる橋本市高野口町。地域内で分業体制が整えられたパイル産地は他に例がなく、圧倒的な生産シェアを誇ります。独特の光沢を放ち、滑らかな肌触りの織りは耐久性に優れ、「高野口パイルファブリック」とブランド化。世界の市場に通じる高い水準をクリアしています。

1950年に創業した「妙中パイル織物」は、高野口町で唯一、染色から製織、プリント、仕上げ加工まで、全工程を自社で行う織物メーカー。「創業者の祖父が社内で品質を管理することにこだわったようです」と話すのは、代表取締役社長の妙中正司さんです。

一貫生産体制の下、品質やコストを安定させ、60年代には同社の原点ともいえるコットンベルベットをアメリカに輸出します。その後、椅子張り・カーテンなどのインテリア、毛布などの寝具、新幹線や観光バスなどの車両用シートなど、妙中パイルの技術力で国内外の多様な受注に対応。70年代後半からは自動車シート用の生地、モケットが全体売り上げの8割を占める看板商品になりました。

しかし妙中さんが入社した92年にはバブル崩壊の影響を受け、客先からコストダウンを要求されるように。「高級な高野口商品から低価格品へ切り替える業者が増え、発注数量が減少。内部コストをできる限りカットしても追いつかないくらい売り上げが下がり、一時は廃業も検討しました」と、妙中さんは当時を振り返ります。

2000年代に入り、液晶テレビやスマホが普及し始めたことから、以前から生産していた産業資材「ラビングクロス」が自動車シート生地に代わる救世主に。「液晶の粒子をそろえるため、画面をこする特殊加工の生地で、液晶パネルの製造過程で使われます」と妙中さん。ラビングクロスを製造できる企業は国内で少なく、大手メーカーに直接商談に出向いたこともあり、同社の主力商品になりました。

22年に現職に就任。4代目となる妙中さんは、パイル織物業界について、「業界全体で大型受注の仕事が減り、高野口でも実働していない機屋(はたや)さんが増えました」と実情を見据えます。一方で、「パイル織物は多様な用途になりうる素材。多ジャンルの製品を生み出してきたように、これからも“ここでしかできないものづくり”を続けます」とも。

小ロットに対応できるようデジタル捺染(なっせん)機を導入。また、施工現場で使われる産業資材も開発中と、これからも高野口に新しい風を吹かせます。

整経

経(たて)糸をセッティングする、織物製造の工程の一つ「整経」

広々とした工場内に織機が整然と並び、生地を織り上げていきます

広々とした工場内に織機が整然と並び、生地を織り上げていきます

自社ブランド「Taenaka No Nuno」で
メード・イン・高野口の魅力を発信

「スペード」(Lサイズ/1万9800円)

A3サイズの封筒が入るスクエアバッグ。ベルベットを使用。「スペード」(Lサイズ/1万9800円)

バッグやポーチ、ブローチ…
高級素材をおしゃれに普段使い

ベルベットやフェイクファーなど、シャネルやディオールなど世界的なアパレルブランドを魅了させた妙中パイルのファブリック。「新しい試みの一つとして、消費者に直接自社のものづくりを伝えたい」と、19年にオリジナルブランド「Taenaka No Nuno」を立ち上げました。

ジャガードベルベットなど最高級のパイル素材を気軽に日常使いしてもらうため、バッグやアクセサリーなどのファッションアイテムをラインアップ。20年の東京インターナショナル・ギフト・ショーでは、スクエアバッグが「ベスト匠の技賞」を受賞しました。髙島屋などの百貨店や東京都美術館などのミュージアムショップにも採用され、県認定の「プレミア和歌山」にも選ばれています。

現在はオンラインショップで購入が可能。「本社にお越しいただければ、パイルの肌触りを体感してから商品を選ぶことも。割引もいたしますよ!」

昨年秋には、工場見学ツアーを初めて実施。国内では同社でしか稼働していない「有線織機」や、1本の糸が布になるまでの生地づくりの工程が披露されました。

「若い世代も含め40人ほど参加され、東京から訪れた方も」と話す妙中さん。「織物産業に限らず、ものづくりの技能継承が難しい時代。高野口ファブリックを残していくためにも、次世代へアピールする機会をつくっていきたいですね」

生地のサンプル

生地のサンプル。最高級の仕上がりと評価され、国会議事堂の椅子にも採用

有線織機

ジャガードベルベットを生産する「有線織機」。織られた生地は、和装に合うバッグや高級椅子に使われます

「レザーバッグ」(4万9500円)

革素材と組み合わせ、重厚感をプラス。「レザーバッグ」(4万9500円)

小鼻などの細部にもフィット!
粉持ちのよい「化粧用パフ

化粧用パフ

 1面で取り上げたラビングクロスの製造技術を生かして誕生したのが、この化粧用パフ。「髪の毛のように細い50デニールのポリエステルフィラメント(糸)を使うのですが、細い糸が得意でなかった弊社としては商品化するのに大変苦労しました」と妙中さん。生地を生産するのに4年の歳月がかかったそう。
きめ細かい毛のパフは粉持ちがよく、弾力のある肌触り。小鼻などの細部にもフィットする粉離れも特長で、美しい仕上がりを期待できます。550円。こちらも本社で販売中。

妙中パイル織物

 妙中パイル織物

代 表 者 代表取締役社長 妙中正司
創    業 1950年
本  社 橋本市高野口町向島193
ホームページ

http://www.taenaka.com/
Taenaka No Nunoオンラインショップ▶︎https://taenakanuno.official.ec/

電話番号 0736(42)3170
営業時間 本社直売は平日午前8時~午後5時

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