お宝ザクザク! 県内初、脊椎動物の化石が集積した地層
恐竜化石の注目スポット

リビング和歌山7月22日号「お宝ザクザク! 県内初、脊椎動物の化石が集積した地層 恐竜化石の注目スポット」

 昨年、広川町の白木海岸で恐竜の歯の化石が4点も見つかったことをご存じですか。 これらが発見された地層から、まだお宝が出てくるかもしれません。和歌山県の恐竜化石調査が一気に進展。今後にも期待が高まっています。

スピノサウルス類の生体復元画(提供:川崎悟司)

スピノサウルス類の生体復元画(提供:川崎悟司)

白亜紀前期の“湯浅層”から
これまでにない数の脊椎動物化石

 今年1月、和歌山県立自然博物館(海南市船尾)は、恐竜の化石が含まれた地層を広川町の白木海岸で発見したと発表しました。

この地層は湯浅町から広川町にまたがる「湯浅層」にあり、約1億3000万年前の白亜紀前期に形成されたものと推定されています。この地層で昨年に見つかった恐竜の化石は4点。植物食恐竜のイグアノドン類の歯1点と、魚食性恐竜のスピノサウルス類の歯1点、種類を特定できない肉食恐竜の歯2点でした。

同時に、恐竜以外の脊椎動物の化石15点も発掘。これらは、ワニの皮骨板(うろこの下にある骨)1点、カメの甲羅片6点、淡水・汽水域のサメの歯2点、さらに、現生種ではアリゲーター・ガーやアミアといった硬くて厚いウロコを持つ硬鱗魚(こうりんぎょ)のウロコ2点などでした。

「植物食恐竜の化石が見つかったのは、和歌山県では初めてのこと。また、ワニの皮骨板も和歌山県初です」と、今回の調査の成果について話すのは、県立自然博物館の学芸課長・小原正顕さんです。「そして、恐竜を含む脊椎動物の化石が、一度にこれだけ多く発見されたことは県内ではこれまでなかったこと。今後につながる発見だと実感しています」と続けます。

和歌山県初の植物食恐竜の化石となったのは、イグアノドン類の歯。

イグアノドン類の 歯の化石

イグアノドン類の 歯の化石

イグアノドン類は、馬のような細長い頭をしていて(下画)、その歯の化石は日本各地の白亜紀前期の地層で見つかっています。

イグアノドン類の生体復元画 (提供:川崎悟司)

イグアノドン類の生体復元画
(提供:川崎悟司)

もう一つ種を特定できたのが、スピノサウルス類の歯。

スピノサウルス類 の歯の化石

スピノサウルス類
の歯の化石

とがった円すい形で、表面の縦の条線とちりめん状のしわ模様が特徴です。スピノサウルス類は、背中に帆のような突起がある恐竜(上画)。水中を泳ぐのが得意だった種もあるという非常に珍しい恐竜として知られ、映画・ジュラシック・パークシリーズにも登場して一躍話題になりました。

残りの2点は、ナイフのような形で、縁がギザギザした鋸(のこぎり)歯状。この特徴から一般的な肉食恐竜の歯であることが分かり、具体的な種類までは特定できませんが、歯の大きさから全長数メートル程度の中型肉食恐竜だとされています。

和歌山県で、これまでに見つかっていた恐竜化石は2点。一つは、小原さんが2007年に和歌山県で初めて発見した恐竜の化石で、肉食恐竜の歯、もう一つは、2018年に発見されたスピノサウルス類の歯。スピノサウルス類の歯は、今回の発掘で2例目となります。

今後の調査に期待が高まる

和歌山県の恐竜化石調査が進展
1億3000万年前を伝える

和歌山県立自然博物館 学芸課長 小原正顕さん

和歌山県立自然博物館
学芸課長 小原正顕さん

今回の発掘調査は、昨年5月17日~19日と、9月26日~30日に、県立自然博物館と北九州市立自然史・歴史博物館、国立科学博物館の3館が共同で行いました。調査のきっかけとなったのは、同年3月に北九州市立自然史・歴史博物館の学芸員・御前明洋(みさきあきひろ)さんが、広川町白木海岸に分布する湯浅層からワニの皮骨板の化石を発見したことでした。

小原さんが、和歌山県で初めて見つけた恐竜の化石。鋭くとがった肉食恐竜の歯

小原さんが、和歌山県で初めて見つけた恐竜の化石。鋭くとがった肉食恐竜の歯

実は、県立自然博物館の小原さんが初めて恐竜の化石を発見したのも、今回の発掘現場に近い湯浅町の海岸でした。そして同じ場所で、県内2例目の恐竜化石となるスピノサウルス類の歯が見つかっています。
「この海岸にも湯浅層は分布しているので、どちらの化石も出どころは湯浅層だと思われましたが、海岸にあった転石から見つかった化石だったので、それ以上の発見はありませんでした」と、小原さんは振り返ります。

今回、広川町側の湯浅層でワニの化石を発見した御前さんは、この化石を県立自然博物館に寄贈するとともに、小原さんに追加調査を提案。ワニ化石を含む岩が、過去に見つかった恐竜化石の岩とよく似ていたことからも、小原さんはすぐに現場を確認し、共同の発掘調査を決定しました。

発掘現場では、厚さ数十センチ、干潮時なら5~6メートルほどが地表に現れた黒色泥岩層を確認。この岩層を掘り出して化石を探したところ、わずか8日間という短い調査期間にも関わらず、大きな成果が得られました。

「湯浅層では貝類や植物の化石が多く出ますが、脊椎動物の化石は非常にまれで、昨年までの23年間で16点しか発見されていませんでした。それが昨年は19点も見つかったことで、和歌山県の化石調査が大きく進展しました。今後につながる大きな発見だと思います」と話す小原さん。「湯浅層は汽水域、例えば川の河口のような場所で形成された地層ですが、脊椎動物化石を多く含む層は、河口域の中でも海や川の本流からやや離れた場所で形成されたのかもしれません。そこは、普段は泥がゆっくりとたまる湿地帯なのだけれど、大雨の時には本流からあふれ出た泥水と共に恐竜の死骸が流れ着いて︙」と、はるか遠い昔の様子を思い描きます。

昨年の調査で採集し、割り切れなかった岩石がまだ残っているため、小原さんは引き続き調査を進めます。「ひょっとすると、竜脚類やよろい竜のような、別の恐竜の化石が出てくるかもしれません。同じ恐竜でも歯ではなく、ほかの部位が見つかる可能性もあります」と、期待を込めながら今後の調査に臨みます。

ワニの化石

御前さんが昨年3月に見つけたワニの被骨板の化石。ワニの化石は県内で2例目

カメの甲羅片の化石

同時に見つかったカメの甲羅片の化石

今回、恐竜化石が含まれた地層から掘り出した岩を割って調査する体験イベントを企画しました。小原さんと一緒に、化石調査をしてみませんか(下記参照)。

リビング和歌山の夏休み特別企画
恐竜の化石調査を体験しよう!

たがね)とハンマー

たがね(左)とハンマー(右)

 昨年に見つかった恐竜化石を含む地層の岩を割って化石調査を体験しませんか。県立自然博物館の小原さんが、同じ地層から掘削した岩を持参。たがねとハンマーを使って岩を割り、化石を探す調査を体験できます。あなたの手で恐竜化石を発見できるかも!?
※調査用の岩、および発見された化石は持ち帰れません
同時に、昨年度の調査で見つかった恐竜の歯の化石や、そのほかの動物の化石の出張展示もあります。この機会にご覧ください。

 

日時 8月2日(水)
午後1時半~3時半
場所 リビングカルチャー倶楽部(くらぶ)
フォルテ教室(和歌山市本町、フォルテワジマ4階)
参加費 無料
参加対象 小学生以上(ただし、小学生は保護者同伴)
定員 30人
※調査するのは1人1つの岩です。皆さんが一度に体験できませんので、時間内に来場していただき、順次案内いたします
持ち物 軍手、ルーペ(虫眼鏡)
申し込み方法

メールで件名に「化石調査体験」と入力、本文に参加者氏名と年齢(学年)、連絡先の電話番号、小学生の場合は同伴する保護者氏名を明記し、下記のアドレスまでliving@waila.or.jp

締め切り 7月26日(水)
※応募者多数の場合は抽選。当選者には、参加の案内をメールで送ります
問い合わせ 073(428)0281
和歌山リビング新聞社 (祝日除く月~金曜午前9時半~12時、午後1時~6時半)
オリガミホさんのYouTubeは
こちらからチェック!
https://www.youtube.com/channel/UCYOelAH-yHC9GckFZHDEmYQ

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