和歌山バーテンダー物語 vol.06
- 2015/3/12
- 大人リビング
- 和歌山バーテンダー物語
ドアを開けるとプロジェクタースクリーンが目を引いた。何も映し出されていなかったが、かえって期待感を抱かせる。大型テレビなら思えない感覚。
「お若いですね」と切り出した。「29歳です」と落ち着いた物腰で答える。マスターになって4年目だという。この店で働き、1年目で店を引き継ぐことになった。店は屋号を変えることなく、32年間ここにある。
「店を持つのは怖くなかったですか」。マスターが変わると、店の空気が変化するので、あえて問いかけた。「どうしようかと思いましたよ。でも自分なりに、おいしいお酒を楽しく飲んでもらうカフェみたいな感じでやっていこうと」。「なるほど。それで、スクリーンですか」。
全国エリート・バーテンダー・カクテル・コンペティションでブロンズ賞を受賞。おごることなく、「もっと所作を磨き上げたい」と話す。いい男である。
「ゆっくり時間をかけてお酒を楽しむなら、どんな進行がいいですか。すし屋では注文する順序があると聞いたので」と問う。しばらく考え、「ショートカクテルを2杯。少し休憩して、ロング。そして、ウイスキーをロックで。最後、アイリッシュコーヒーはいかがでしょうか」。「これぞ『ヴォーグおすすめコース』ですね」と笑い合う。
そんな話をしていると、あっという間に時間が過ぎる。店を後にし、「所作」について考えた。所作を磨き上げると、最後は「無」につながる。「無」は、見る方からは「美」になる。確かに、上中さんの所作には“美しさ”が宿っていた…。
(次回は4月11日号に掲載)
住所 | 和歌山市北ノ新地下六軒丁8 サムシングニュービル2階 |
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電話番号 | 090(3991)9317 |
営業時間 | 午後8時~翌3時 |
休日 | 不定休 |
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