10月は里親月間
家族のかたちいろいろ

リビング和歌山10月2日号「10月は里親月間 家族のかたちいろいろ」

 実の親子でも関係がうまくいかない一方、他人でも強いきずなでつながる…。家族のかたちって何? 今号は、さまざまな事情で家族と一緒に暮らせない子どもを、一定期間家庭に受け入れる「里親制度」について取り上げます。10月の里親月間を機に、現状や制度を知り、いろいろな家族のかたちについて考えてみませんか。

子どもたちの将来のために
和歌山県里親会・富松会長に聞く

和歌山県には里親とその関係者で構成する「和歌山県里親会」があり、和歌山市、紀北、紀中、紀南の4支部合わせ、155世帯が加入(9月27日現在)。里親同士で情報交換をするサロンや親子で参加するレクリエーションなど、定期的に集まり交流を深めています。

4支部をまとめているのが和歌山県里親会の会長・富松伸六さん(写真)。

和歌山県里親会会長 富松伸六さん、妻の紀子さん

和歌山県里親会会長
富松伸六さん、妻の紀子さん

妻の紀子さんと里親を始めたのは21年前で、今まで10人の子どもを育てました。伸六さんは「私も妻もお互いの両親が里親をしていたので、家に実の兄弟・姉妹以外の子どもがいるのが当たり前の生活になっていました。ですので、“里親になる”というのは自然なことでした」と振り返ります。

基本、子どもが里親の家で生活できるのは18歳まで。里親と里子のマッチングが重要なため、年齢の低い子どもほど、児童相談所や施設で面会を重ね、外出、外泊と段階的に様子を見ながら、関係を築いていきます。そして、お互いに問題がなければ委託、どちらかが合わないときは委託が解除されます。

今、富松さんが一緒に暮らすのは16歳と8歳の男の子。紀子さんが「16歳の子はとてもデリケート、8歳の子はまだまだ甘えん坊」とほほ笑むと、伸六さんが「子育てに付きものの悩みや、さまざまな考え事はありますが、毎日にぎやかで楽しいですよ」と続けます。家を出て連絡のなかった子どもが突然、訪れることも。伸六さんは「たいていは悩みや相談があるとき。実家みたいなもんです」と笑顔。

学校や関係機関などのサポート体制も整ってきており、2人は「家庭での生活経験は、将来、家庭を持ち、子育てを行うときなどに役立ちます。子どもたちの将来のために、里親への理解が深まり、制度が広まっていけば」と話します。

育ての親! 里親制度について知ろう

養護が必要な子どもの約80%が施設で生活
県は29年度までに里親委託率44・1%目指す

虐待や親の病気、経済的な問題など、さまざまな事情で社会的養護が必要な子ども(18歳未満)は、全国で約4万500人。そのうち約80%が、乳児院や児童養護施設などの施設で暮らしています(厚生労働省調べ)。子どもの成長にはできるだけ早いうちから、家庭の中で特定の大人と1対1で愛着関係を築くことが大切といわれています。国は2016年、児童福祉法の一部を改正。一定期間子どもを家庭へ迎え入れる里親委託率を、29年度までに年齢別・段階的に50%~75%まで引き上げる目標を掲げ、施設養護から里親やファミリーホーム(数人の子どもを育てる)での家庭養護へと移行を進めています。

和歌山県は2019年度に「社会的養育推進計画」を策定。里親制度を推進し、29年度までに、里親登録270世帯、委託率44・1%(108世帯)を目指しています。県子ども未来課によると、昨年度3月末日の時点で社会的養護が必要な子どもは336人、うち里親(ファミリーホーム含む)で暮らしているのは70人(21%)と、少しずつ里親登録数も増えています(下図参照)。
社会的養護が必要なこどもの現状_図、里親登録者数(年度末の世帯)

同課・阪口真美さんは、「子どもが健康に成長していくために大切な経験が家庭の中に多くあります。登録数が増えれば、より多くの子どもたちに家庭で生活するチャンスが与えられることにつながります。少しでも多くの人に里親制度について知ってもらえれば」と話します。

里親には「養育里親」「養子縁組里親」など、いくつかの種類があります(下記参照)。

里親の種類

一般的に里親といえば「養育里親」。
(県知事の認定が必要) ※週末里親制度は認定が要りません

養育里親
保護者のもとで暮らすことができない原則0歳~18歳の要保護児童を一定期間養育する里親。必要に応じて、20歳未満まで措置延長ができます

養子縁組里親
子どもに保護者がいない場合や、生みの親が親権を放棄する意思が明確な場合など、法的な親子関係を解消して里親と養子縁組み。実の子としての親子関係を前提として養育する里親です

専門里親
非行や障害など、特に専門的な援助を必要とする子どもを養育します

親族里親
祖父母などの三親等以内の親族が、子どもを養育する里親です

週末里親制度
児童福祉施設で生活し、保護者との面会や帰宅の機会の少ない子どもを対象に、土・日曜、祝日、大型連休など、家族として迎え入れ、家庭生活の経験を提供します

里親になるには、特別な資格は要りませんが、研修の受講などの要件が設けられています。

では実際、里親になるにはどうすれば?

里親支援センター「なでしこ」の里親支援員・平(ひら)須賀さんは「当センターまたは近くの児童相談所にご相談ください。子どもを迎えるまでの流れなどを説明します」と話します。(下記参照)

里親登録までの流れ
①児童相談所か里親支援機関に問い合わせ
②里親研修を受講
③児童相談所職員による家庭調査(面接・訪問)
④和歌山県社会福祉審議会が認定について審議
⑤和歌山県知事が里親を認定・登録
子どもを迎えるまで
①児童相談所が親権者に里親委託の同意を得ます
②児童相談所が子どもに適した里親を探します
③里親の意向を確認。委託の場合、面会の日程調整
④子どもと里親が面会。段階的に交流を重ねます
⑤児童相談所の決定で里親委託。生活が始まります

里親は善意だけでできるものではなく、迎える子どもへの理解や愛情がなければ継続できません。平さんは「児童相談所や里親会と協力しながら、里親委託後も、家庭訪問や電話・来所相談、養育スキルアップのための研修会や交流会、里親・里子向けの心理相談など、手厚くサポートしています。“自分たちも里親に”と思ったら、まずは相談会に参加してくださいね」と話しています(下記参照)。

●研修&相談会●

里親相談会&パネル展【無料】

日時・場所

10月8日(金)
午前10時~正午、午後1時~4時
紀の川市役所南別館3階会議室(同市西大井)
※パネル展は、10月4日(月)~8日(金)要申し込み。
10月7日(木)締め切り

11月5日(金)
午前10時~正午、午後1時~4時
岩出市役所(同市西野)
※パネル展は、11月1日(月)~5日(金)要申し込み。
11月4日(木)締め切り

お問い合わせ 里親支援センター「なでしこ」
0736(69)1004

里親制度 個別相談会【無料】

日時・場所 10月10日(日)
午前10時~午後4時
和歌山市子ども総合支援センター(同市北桶屋町)
要申し込み(当日参加可)
お問い合わせ

和歌山市子ども総合支援センター
073(402)7830

養育里親・養子縁組里親 (基礎・登録前・更新)研修【無料】

日時・場所 前期:11月20日(土)基礎研修 ※実習は個別に調整
11月22日(月)、29日(月)、
30日(火)登録前研修

後期:2022年2月3日(木)基礎研修
※実習は個別に調整

2月6日(日)、19日(土)、20日(日)登録前研修
和歌山市河南コミュニティセンター(同市布施屋)
要申し込み。10月29日(金)締め切り

お問い合わせ 里親支援センター「なでしこ」
0736(69)1004

里親制度に関する問い合わせ

施設名 里親支援センター「なでしこ」
電話 0736(69)1004
住所 岩出市中迫667-1
施設名 県子ども・女性・障害者相談センター
電話 073(445)5312
住所 和歌山市毛見1437-218

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