今シーズンの冬ごもりは、家の中で読書を。心も体もほっこり、親子で本に親しみませんか。図書館スタッフや書店、読書会の進行役ら、本好きに読書にハマるきっかけなどのエピソードを聞きました。
和歌山県民は本を読まない!?この冬は読書で世界を広げて
寒~い冬は、暖かな家の中で読書を楽しみませんか。想像力や集中力がアップするといわれ、世界が広がる読書ですが、文部科学省の「平成29年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)結果の分析」(小・中学生対象)によると、規則的な生活を送り、本や新聞に親しむ子どもは、学力が高い傾向にあることが分かったといいます。
悲しいことに、総務省統計局による「平成28年度社会生活基本調査」では、和歌山県民の「趣味としての読書率」は、全国最下位。読書にハマるには、おもしろいと思える読書体験が大切です。幸い和歌山市には、和歌山市民図書館、和歌山県立図書館、“まち”に寄り添う小さな書店「本屋プラグ」をはじめ特徴的な本屋さんがあり、本好きによる読書会も開かれているなど、本に親しむ環境が整っています。
今回、“本好き”が読書が好きになったきっかけの本、最近読んでおもしろかった本について聞きました。親子でぜひ参考にしてみてください。和歌山県立図書館の兒玉佳世子館長は、どんな本を選べばいいか迷ったときには「書店が選ぶベスト○○などの中から、興味のある物を選ぶのもいいですよ」と。さらに「図書館を利用するときは、ぜひ気軽に司書に相談を。本選びを丁寧にお手伝いします」とも。
本好きたちの読書歴をのぞき見!
1.読書にハマるきっかけになった本
2.最近のおすすめ本
本屋プラグ
三木早也佳さん
「本屋プラグ」店主。「本を読むことで何か得ないと! と思う必要はありません。構えず、気軽に楽しんでください」
初めて親にねだったのが「21世紀こども人物館」。近現代の多彩な偉人の、ユニークなエピソードを知ることが楽しかったのを覚えています。おいっ子たちにも読みつがれて、今はボロボロ。
「ヒト夜の永い夢」は、和歌山が生んだ“知の巨人”熊楠を主人公にしたSFロマン。日本文学や歴史好きならきっと夢中になると思います。
①21世紀こども百科
21世紀こども人物館
荒俣宏 ほか
小学館/A4変形判/390ページ/5236円
科学や政治、芸術…歴史を作った偉人たちの業績を、3000点の写真とイラストで紹介。偉人たちの名言も分かりやすく解説。大人が読んでもためになる一冊です。
②ヒト夜の永い夢
柴田勝家
早川書房/文庫判/573ページ/1100円
昭和2年。秘密団体「昭和考幽学会」に入った、博物学者・南方熊楠は、粘菌を使って、思考する自動人形「天皇機関」を完成させます。やがて少女の姿をしたその人形は、時代の名士たちを翻ろうし…。
嶋田詔太さん
「本屋プラグ」店主。「読書は、音楽を聴くことや映画をみることと同じように、“娯楽”として親しむもの」
小6の頃かな、家にあった本棚でたまたま見つけたのが「大地」。長編のおもしろさを初めて味わった作品です。未知への好奇心が刺激され、外国に興味を持つきっかけにもなりました。
最近読んだ中では、「パワー」がおすすめ。リアルな描写のディストピア・エンタメ。フェミニズムや暴力について考えさせられる作品です。
①大地 全4巻
パール・バック
19~20世紀、中国に生きた王家三代にわたる人々の年代記。貧しい農民の王龍は、ある春、大地主の黄家から奴隷の娘を嫁にもらいうけます。一家には幸福が訪れますが、その翌年、大かんばつが起こり…。
②パワー
ナオミ・オルダーマン
河出書房新社/B6判/433ページ/2035円
ある日突如として、女性の鎖骨に「スケイン」という特殊な器官が発達。女性だけが、手から強力な電流を放つことができるように。やがて男女の支配力は逆転し、女性優位の世界へと変貌していきます。
新刊書や古書、絵本や雑誌まで幅広く扱う“まちの本屋さん”。さまざまなイベントも開催
和歌山県立図書館
兒玉佳世子さん
和歌山県立図書館館長。子どもを本好きにさせるには「まずは大人が読む姿を見せて」と
外遊びが好きだった私が本を読み始めたのは、3歳年上の読書好きの姉に対抗心が芽生えたのがきっかけ。彼女が「シャーロック・ホームズ」を読んでいたので、私は「怪盗ルパン」をと。見事にハマってしまいました。最近星5つをつけたのは、「さざなみのよる」。“死ぬのも意外と悪くないかも”とおだやかに思わせてくれる作品。
①「怪盗ルパン」シリーズ
モーリス・ルブラン
ポプラ社/文庫判/331ページ/638円
フランスの豪華客船に、怪盗ルパンが紛れ込んでいると聞き、騒然となる乗客たち。金髪で右腕に傷跡があり、高慢な大金持ちから盗みを働き、貧しい人を助ける、英雄的な大泥棒ルパンの物語。
②さざなみのよる
木皿泉
河出書房新社/B6判/224ページ/1540円
「小国ナスミ、享年43」。末期がんに侵されたナスミの周囲の人々、関わり合った人々の心が、彼女の死によって揺れる様を描いた14話。最終章へ向け、ナスミの優しさが広がっていきます。
イベント情報
ボランティアによるおはなし会
12月21日、28日、2020年1月11日、18日、25日各日土曜午後2時~2時半。児童室で開催。申し込み不要
季節のおはなし会 あかちゃんといっしょに楽しもう
2020年2月19日(水)①午前10時半から②午前11時から
図書館職員によるおはなし会が児童室で開催。申し込み不要
電話番号 |
073(436)9500 |
住所 |
和歌山市西高松1-7-38 |
営業時間 |
午前9時~午後7時(土・日曜、祝日は6時まで、児童室5時まで) |
定休日 |
月曜(祝日の場合開館し翌日休館)、第2木曜 |
スイッチ読書会
谷本由紀さん
心理カウンセラー。和歌山市内で開催されている「スイッチ読書会」の進行役
母が幼稚園の先生だったので、絵本が身近にありました。小学生時代は移動図書館が楽しみで。その頃は「とんでる学園シリーズ」が好きでした。今おすすめしたいのは、「心のゼイ肉を落とすことを忘れてはいませんか?」のコピーにひかれて買った「あなたのゼイ肉、落とします」。読んだ後、やる気がわいてきますよ。
①「とんでる学園」シリーズ
名木田恵子 ほか
ポプラ社/A5判/168ページ/1巻968円
人気を集めていたのは、ミステリー「エッチと怪盗アンパン」シリーズ、少女と幽霊とのちょっと切ない恋を描く「ふーことユーレイ」シリーズ。名木田恵子さんは「キャンディ・キャンディ」の原作者でもあります。
②あなたのゼイ肉、落とします
垣谷美雨
双葉社/文庫判/320ページ/715円
読んで、やせる!?ダイエット小説。マスコミには一切登場しない謎の女性・大庭小萬里。彼女の個別指導を受ければ、誰もがやせられるといいます。さらにどうやら、“心のゼイ肉”も落としてくれるようで…。
イベント情報
ビブリオバトル in Yorozumachi Re:boot Culture(リブートカルチャー)
2020年1月11日(土)午後0時半~2時
5分間でおすすめの本を紹介して、一番読みたくなった本を決める「ビブリオバトル」。発表者、観戦ともに募集中です。
和歌山市民図書館
山本美弥さん
カルチュア・コンビニエンス・クラブ社員。新しい市民図書館の運営に携わっています
昔から「しんどいな」と思うときやモヤモヤしたときに本を読んできました。「キキ・ストライク」は、一気に想像の世界に連れて行ってくれる冒険ファンタジー。読後は、普通の景色もキラキラして見えます。「しあわせしりとり」は普段は読まないエッセイですが、何気なく開いたページを楽しめるので、心の支えになっています。
①キキ・ストライクと謎の地下都市
キルステン・ミラー
理論社/A5判/477ページ/2090円
ニューヨークの地下に存在する都市「シャドウ・シティ」。白い肌に白い髪、どこか危険な香りのする転校生キキに誘われたアナンカは、地下都市の大冒険に繰り出すことになります。
②しあわせしりとり
益田ミリ
ミシマ社/四六判変形並製/200ページ/1650円
イラストレーターとして有名な益田ミリの、朝日新聞連載「オトナになった女子たちへ」に加筆・修正したエッセイ集。全47編。子どもの頃の思い出や未来の話、あれやこれやがしりとりのように連鎖していきます。
和歌山市民図書館一部オープン!
12月19日(木)から、新市民図書館が一部サービスを開始。オープンするエリアは、2階エントランス。グランドオープンは、2020年4月下旬を予定していますが、少しでも早く資料提供ができるようにと、一部の業務がスタート。図書館資料の貸し出し・返却、予約資料の受け付け・受け取りなどが可能になります(閉館時はブックポストも利用可)。
※一部開館エリア以外は、工事・開館準備中のため利用不可