和歌山市まちなか近未来 中心市街地にぎわい創出
- 2019/5/23
- フロント特集
和歌山市の中心市街地の再生に向け、複数の大型事業が進行中です。今年和歌山市は市政130周年、また、令和という新たな時代に、まちなかはどのように変化を遂げるのか―。進行中・計画中の事業を紹介するとともに、まちの声を集めました。
大学開学と再開発事業の完成で活性化に向けて前進
空洞化が叫ばれて久しい和歌山市の中心市街地ですが、遊休不動産を活用したまちづくりや、新たな楽しさや魅力を生み出すことで人を呼び込むさまざまな取り組みがされ、活性化に向けて成果も見られてきました。
そんな中、この春には、まちなかでは2校目となる「和歌山信愛大学教育学部」が本町小学校跡地に開学③(1校目は、雄湊小学校跡地東京医療保健大学和歌山看護学部・昨年4月開学)。1期生約80人がキャンパスライフを送っています。
また、南海和歌山市駅のリニューアルを含む「和歌山市駅前地区市街地再開発事業」①では、すでにオフィス棟と駐車場が稼動し、今年度中には「新和歌山市民図書館」②がオープンする予定。2020年春に商業棟・ホテル棟が開業すると、いよいよ新しい和歌山市駅ビルの完成です。同時に、西汀丁交差点近くで着工されている「北汀丁地区市街地再開発」⑥も同年春に完了予定。専門学校や福祉施設、住宅などの都市機能を備えた複合施設が完成します。
伏虎中学校跡地は「和歌山県立医科大学薬学部」の開学④や「和歌山市民会館」の移転⑤、さらには、和歌山市のシンボルである和歌山城内にも復元的整備⑦⑧が計画中です。近い将来の明るい兆しが見えてきた中心市街地について、まちの声を集めました。
誇りと愛着を持って
都市計画や整備が形になりつつあり、さらなるにぎわい創出に大きく動くことが期待される和歌山市の中心市街地に向け、さまざまな立場のまちの人たちの声を集めました。
子どもから高齢者まで利便性を感じられるまちに
和島興産(フォルテワジマ) 代表取締役 梅田 千景さん
伏虎義務教育学校ができ、近くで子どもたちの姿をよく見かけるようになりました。大学の開学で学生さんたちが増えてくることも期待されます。一方で、この周辺に住む方たちの高齢化や独り暮らしも増えています。子どもたちから高齢者まで、みなさんの日々の買い物が周辺の商店街で事足りるような利便性の高いまちになってほしいですね。商店街のお店のシャッターすべてが開いて、昔のにぎわいを取り戻すのが理想です。
人が増えると車も増える来る人も住む人も安全に
城北地区第5区自治会 会長 有田 昌純さん
さまざまな機能が備わり、人が集まるようになると同時に車の通行量も増えると思います。今も、以前に比べると多くなっているので、駐車場の整備が望まれるところ。自治会内には駐車禁止が夜間や土曜・休日に解除される道路があり、見直しを警察にお願いしているところです。雑然と車が停められ、通行が不便ではイメージもよくないですよね。次世代の人たちが「住みたい」と思える魅力的なまちになることを願います。
市民が育てた“まちの宝”さらにクオリティーを磨くために
和歌山市民オペラ協会 会長 多田 佳世子さん
オーケストラ・オペラ・劇団がそろう和歌山市は、全国の中核都市の中でも文化度が高いと私は思っています。今の和歌山市民会館ができて40年、多彩な文化・芸術団体が根付いてきました。市民が育てた宝です。その宝を未来に向けてどう磨くのか、それは場所や建物の問題ではなく、文化・芸術に携わる私たちと市民みなさんの気概や努力だと思います。さらにみなさんが親しみ、憩い、そして全国に誇れる場所になってほしいです。
2021年の国民文化祭に向けさらなる文化の発展に
和歌山市交響楽団 団長 恩地 信博さん
私たちオーケストラは和歌山市民会館で演奏会を開いていますが、新しく計画されているホールは音響効果を重視した設計だと聞いています。とても楽しみですね。2021年には国民文化祭が和歌山県で開催されます。新しいホールが、もし間に合えばうれしいです。和歌山市に素晴らしいホールがあるとういことを全国の演奏家にアピールでき、水準の高い人たちが集まれば、地域の文化レベルもさらに上がると期待できます。
人の流れをまちなかに拠点をつなげる仕掛けづくりを
サスカッチ(和歌山市指定都市再生推進法人) 代表取締役 小川 貴央さん
まちなかではリノベーションで新しいお店が増え、イベントなどが定着してきて、少しずつにぎわいが生まれています。あとは、和歌山市駅からぶらくり丁周辺、そして和歌山城へと人の流れができればいいですね。市駅の新市民図書館、和歌山城に近い市民会館と拠点ができ、それらを結ぶ動きが生まれれば。アートや音楽、映画、本などのカルチャーををまちづくりのテーマに、一つのカラーを持ったまちが育つ仕掛けが必要だと思います。
進路の選択肢を広げる大学学生さんとの出会いも楽しみに
SANDOYA オーナー 秋山 理絵さん
高校生の子どもがいるので、大学の開学には関心があります。進路の選択の幅が広がるのはいいですね。そして、学生さんたちがまちなかに戻ってくるのは、とてもうれしい。このサンドイッチ店を始めたとき、高校生や学生が毎日でも来られるようにと、手軽な価格設定のメニューも取り入れました。今でも栄谷の和歌山大学からバイクに乗って来てくれる大学生もいます。またこれからも、新しい出会いがあるのを楽しみにしています。
子どもたちの将来を見据え教育文化都市をビジョンに!
和歌山大学教育学部附属中学校
地域学校協働コーディネーター 竹川 裕之さん
PTAの活動を通して他府県を訪ねる機会が多いのですが、教育文化レベルを上げることに注力している都市は発展しています。人が育つまちになっているんですよね。和歌山城という歴史的な建造物があり、その城下町には教育拠点が増えてくる、そして文化拠点の計画もあります。10年、20年後、子どもたちの将来を見据えて、行政も地域も連携を取りながら“教育文化の発展”をビジョンに、まちづくりが進むとうれしいです。
“観光学園都市”を目指す環境と拠点が整備される
和歌山市中心市街地の動きについて、まちづくりや地域再生論、都市経済学を研究テーマとする和歌山大学の足立基浩副学長に話を聞きました。
学生たちがぶらくり丁で活動を始めた約15年前と比べ、目に見える形でまちが変わってきた印象があります。加えてハード整備が進むことで、一気にまちの形も変化します。都市サイズを広げず、さまざまな機能を空洞化したまちなかに集約させる、いわゆるコンパクトシティー化は、にぎわい創出にも効率的です。
さらに、和歌山市の中心市街地には和歌山城が構え、周辺に大学が増えるので、両者を生かした“観光学園都市”を目指せば、より発展が見込めると思います。
例えば、和歌山城を訪れる観光客をまちなかに誘導する仕組みづくりに学生たちを巻き込む、そんな取り組みを進めるのも一つの手法。また、私が提言しているのは、けやき大通りに路面電車を復活させること。観光的な要素を重視しつつ、住民や通勤者、学生たちも使えるような。国内外の代表的な観光都市には路面電車があることが多いんです。和歌山市にはもともと路面電車が走っていました。その利点を生かせば、不可能ではないと思います。