脳と心を刺激するアートセラピー「臨床美術」
- 2018/10/18
- フロント特集
芸術の秋! 最近注目を集めている「臨床美術」を紹介します。“絵を描くのは苦手”と思っている人も、ちょっとその世界をのぞいてみませんか。学校などで学んできた美術とは少し違った楽しさが詰まっています。
子どもも大人も関係なくアートで人生に輝きを
「臨床美術」を知っていますか。クリニカル・アートとも呼ばれ、いきいきと輝く人生をサポートするとして、現在注目を集めています。和歌山市で活躍する、日本臨床美術協会資格認定会員、臨床美術士の南方恵子さんに話を聞きました。
1996年、彫刻家の金子健二さんが中心となり、脳外科医やファミリーケアアドバイザーとともに、高齢者の脳機能訓練などに有効なアートプログラムを開発したのが、臨床美術の始まりです。絵やオブジェなどの作品を、楽しみながら作ることで脳が活性化。高齢者の介護予防や認知症予防にはもちろん、社会で働く大人のストレスケア、子どもの感性や創造力アップに役立てられる、芸術療法(アートセラピー)の一つです。
「作品の良しあし、うまい、下手は関係ありません。年齢や性別、職業を問わず、どなたにもできる美術です」と南方さんは話します。絵の描き方や立体物を作る技術を学ぶのではなく、作り上げる過程を楽しむのが、臨床美術の特徴。2面で詳しく紹介します。さらに、体験講座も企画。あなたも癒やしのアートを始めてみませんか。
上手、下手じゃない臨床美術の魅力
五感をフル活用して自由な作品作りに没頭
日本臨床美術協会独自のアートプログラム・臨床美術では、出来上がった作品を重要視するのではなく、制作する過程を大切にしています。リンゴなどを対象に絵を描く場合、視覚だけを使うのではなく、嗅覚や触覚など五感をフル活用して作っていくのが特徴です(左記参照)。触って、匂いをかいで、味わって、ときには音楽を聴いて手を動かしながら、脳の活性化を図ります。描き方や作り方だけでなく、画材も普通とは違ったユニークな物を使うことが。サンドペーパーにクレヨンを使って描いたり、透明の板に粘土を好きなように伸ばしたり…。毎回新しい発見ができるのも魅力です。
作業中は周りが急がせたり、手伝ったりはしません。参加者は、作業に没頭。「皆さん夢中になって、作品作りに取り組みます」。何かに集中することでストレス解消になったり、さまざまな刺激を受けて脳の働きが活発になり、日常生活が豊かに。
また、作業を通じての会話も大切にしています。「例えば、サツマイモをモチーフにしたときは、高齢の参加者が『私が子どもの頃はね…』と昔の出来事を思い出して語ってくれることも。いろいろなことを教えてもらったり、話を聞いて感動したり、私も元気になります」。作品を作る過程で生まれるコミュニケーションも楽しいと南方さんは話します。出来上がった作品は、参加者全員で見せ合って鑑賞会。「上手」「下手」という言葉は禁句。「○○の色がいいね」「○○のように見える」などと感想を言い合います。
南方さんは、臨床美術士として活動を始めて5年ほど。介護施設で教室を設けたり、他の臨床美術士(湯浅町の赤田友美さん、御坊市の小野千寿子さん)と協力し合いながら、一般に向けたワークショップを開くことも。「障害がある人、子どもや大人、男女に関係なく、たくさんの人に、臨床美術の楽しさを知ってほしいです。和歌山では、まだまだ認知度が低いのが残念。臨床美術士も増えて、臨床美術が広がってほしいですね」と南方さん。
普段美術に触れる機会がない人、“絵心がない”と思っている人も、体験講座に参加してみませんか(左記参照)。自由にアートを楽しんで、心豊かな生活を送りましょう!
日本臨床美術協会独自のアートプログラムで、感性を育みませんか。誰でも、楽しく取り組むことができます。何を制作するかはお楽しみに!
講師 | 南方恵子さん 赤田友美さん 小野千寿子さん |
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日時 | 11月21日(水)午前10時~11時半 |
場所 | 健康クラブ(和歌山市北島453-47ガーデンパーク東エリア) |
参加費 | 1080円(別途材料費500円) |
対象 | 一般 |
定員 | 25人(最少開講人数15人) |
申し込み | 健康クラブ 073(456)1166 (月~金曜午前10時~午後8時、土曜午前10時~午後2時 ※土・日曜、祝日除く) |