甘みがあっておいしい“ナスの王様” 復活!紀州伝統野菜 湯浅なす
- 2017/7/6
- フロント特集
心豊かになれる和歌山の情報を届ける特集「Good Life~心に潤いと輝きを~」。今週号は、古くから湯浅町で栽培されていた伝統野菜のナスを紹介。金山寺みその原料として使われていた湯浅なすですが、栽培農家が減り、絶滅に近い状態に。しかし、地域の人たちの手で復活を成し遂げました。
金山寺みその原料に使われてきたナス
絶滅の危機で、改めてそのおいしさを知る
夏野菜の代表格の一つ、ナス。頭に思い浮かべるのは長ナス?それとも、お隣は大阪府泉州地域の水ナスでしょうか。
和歌山の伝統野菜としてナスが存在するのを知っていましたか?有田郡湯浅町で育てられる、その名は〝湯浅なす〞。形はまん丸、直径は約10センチ、中にはそれを上回るものも。手に持つと、〝ずっしり〞と重さが伝わります。それもそのはず、一つで300グラム〜400グラム、これは通常のナスの約2倍で、実がしっかりと詰まっている証し。これが湯浅なすの特徴です。紫色の皮をむいて、真っ白い実を切り分けてそのまま生でかじると、〝シャリッ〞とまるでリンゴをかじったかのような食感。生でもナスのあくをほとんど感じることなく、ほのかな甘みがあっておいしく食べられます。
湯浅といえば、しょう油作りの発祥の地とされ、しょう油の起源は、今に伝わる金山寺みその祖「径山寺(きんざんじ)みそ」を漬け込んだ桶(おけ)にたまった汁だと伝えられています(下記「日本遺産に認定」参照)。
この湯浅なすは、古くから金山寺みその材料として使われていました。しかし、近年になって長ナスが栽培の主流となり、その姿がだんだんと見られなくなっていたのです。
生産者と二人三脚で復権に挑む
火を通すと、とろっとして味わい深く
煮崩れせず、料理に使いやすい
湯浅なす復活のきっかけを作ったのは、金山寺みそや湯浅しょう油を製造・販売する「丸新本家」と「湯浅醤油(しょうゆ)」代表取締役の新古敏朗さんでした。新古さんが家業に関わり始めた20数年前までは、まだ湯浅なすは金山寺みその材料として主流でした。しかし、市場価格が安定していなかったことや、食品の流通販路が変化し、大量生産される長ナスにその役目は移行していきました。
「金山寺みその材料としてだけではなくて、この辺りでは、ナスといえば湯浅なすが当たり前のように食べられていました。ところがだんだんと姿を消し、実はそのことにも気付かずにいたのですが、今から8年前の2009年の夏、まちの八百屋さんで湯浅なすを見かけたんです。話を聞いてみると、湯浅なすを栽培する農家が、もう地元に2軒しかないと聞き、驚きました。その後、調べてみると、湯浅なすはこの地域特有のものだと分かったんです」。そう話す新古さんは、歴史と伝統を受け継ぐ金山寺みそやしょう油を作りを続け、これまでその食文化を大切にしてきました。同じ思いで、ふるさと湯浅で育まれてきた伝統野菜の湯浅なすも、受け継いで後世に残していかねばと、復活に向けて取り組み始めました。
細々と育て継がれてきた湯浅なすから種を取り、苗を育て、栽培を始めたのは翌年の2010年。6軒の生産者が協力して湯浅なすを栽培、収穫した実で金山寺みそを仕込みました。「みそに向いた湯浅なすは一時期にしか収穫されないので、一年分を塩漬けにして保存しておきます。塩漬けは2度。手間暇がかかりますが、湯浅なすは実がしっかりとしているので、漬け込んでもその存在感が分かる昔ながらの金山寺みそが出来上がりました」
その後、復活に向けた動きが本格化。栽培農家たちによる「生産者部会」に、行政や地元商工会、流通事業者を交えた「和歌山湯浅なす推進研究会」が発足。湯浅なすを使った金山寺みそを復活させること、また食材として一般に流通することも目的に、農と商が連携したプロジェクトに発展しました。2013年には、和歌山県優良県産品推奨制度「プレミア和歌山」に認定、湯浅町のふるさと納税の返礼品にも選ばれるなど、知名度を高めてきました。
現在、湯浅なすの生産者は、湯浅町と有田川町に8軒。すべて露地栽培で昨年は約10トンを出荷。そのうち、約半分が金山寺みその材料に使われ、残りは食材として出荷されました。
「5月に苗を植え、収穫が始まるのは7月に入ってから。例年10月ごろまで収穫が続きます」と説明するのは、生産者部会の代表・三ツ橋忠男さん。「湯浅なすは実が大きいので枝ぶりも大きいですが、それでも実が育つと、重みに耐えかねて枝がしなって実が地面についてしまったり、折れたりもします。いろいろとやり方を研究して、今では畝の両脇に柱を立て、主な枝4本を上からひもで吊るします。実が成ると、収穫とともに根元の葉を1~2枚残して枝を切り落とします。こうすると木が元気になって10月ごろまで収穫ができます」。普通のナスと比べてこうした手間がかかるので、大量生産には向かないとも。ほとんどの生産者が米やミカンを栽培しながら湯浅なすを育てています。販売ルートも卸売市場には出荷せず、窓口は地元の青果店に(古由青果・下記参照)。その他、各生産者が独自に契約する小売店や地元の特産品直売所、また自らが設ける無人販売所などに並べることもあります。
「火を通すと、とろっと軟らかくなって、ナスの味わいの濃いのが特徴。身が締まっているから煮崩れしにくく、どんな料理にも使いやすい食材だと思いますよ。毎年湯浅なすを楽しみにしてくれている人も多くなりました」と三ツ橋さん。
出荷は7月中旬ごろから始まります。この夏は、ぜひ紀州伝統野菜の湯浅なすを手に入れて、味わってみてください。
問い合わせ | 古由(ふるよし)青果 |
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住所 | 湯浅町湯浅1074 |
電話 | 0737(64)1777 |
営業時間 | 午前9時~午後5時 |
定休日 | 日曜、祝日 |
ホームページ | http://furuyoshi.com/ |
問い合わせ | ピアット 城下町の八百屋さん |
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住所 | 和歌山市板屋町3-1階 |
電話 | 073(488)6340 |
営業時間 | 午後1時~午後4時 |
定休日 | 月・金曜営業 |
問い合わせ | 紀州路ありだ |
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住所 | 有田川町熊井674-3 阪和自動車道・湯浅御坊道路 吉備・湯浅パーキングエリア(上り) |
電話 | 0737(53)2408 |
営業時間 | 午前8時~午後8時 |
定休日 | 無休 |
そのほかにも…
ファーマーズマーケット「ありだっこ」 | 有田川町土生33-1 |
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「湯浅醤油」店頭 | 湯浅町湯浅1464 ※店頭に、山田小学校の児童たちが育てた野菜の販売コーナーあり(湯浅なすが並ぶことも) |
【湯浅まつり】 | 7月22日(土) 「和歌山湯浅なす推進研究会・生産者部会」が出店。湯浅なすの試食・店頭販売を行います。午後8時15分から花火の打ち上げも |
[材 料](2人分)
●湯浅なす・・・・1本 ●しょう油・・・適量 ●ショウガすりおろし・・・・・適量
- くし切りにして網で焼きます(皮が苦手な人は皮をむいてからでもOK)
- 裏表をほどよく焼いてから、ショウガじょう油でいただきます
[材 料](2人分)
●湯浅なす・・・・・1個 ●サラダ油・・・・大さじ1+大さじ1 ●ニンニクみじん切り・・・・小さじ1 ●ショウガみじん切り・・・・小さじ1 ●白ネギみじん切り・・・・1/2本分 ●豆板醤(とうばんじゃん)・・・・大さじ1 ●甜麺醤(てんめんじゃん)・・・・大さじ1 ●豚ひき肉・・・・150g
A(水400cc、鶏がらスープの素、小さじ1、しょう油小さじ1、砂糖小さじ1/2)
●塩少々 ●糸唐辛子…少々 ●水溶き片栗粉(片栗粉大さじ2と水大さじ2)
- 湯浅なすを一口大に切り、炒めて油をなじませておきます
- フライパンに油をひき、ニンニク、ショウガ、白ネギを炒め、豆板醤・甜麺醤を加え、火が通ったら、豚ひき肉を入れてパラパラになるように炒めます
- Aを加えて煮立たせ、さらに①を入れて塩で味を調えます
- 火を止めてから水溶き片栗粉を加えて混ぜ、再度煮立たせてとろみをつけ、糸唐辛子をのせます
[材 料](2人分)
●湯浅なす・・・・1個(塩少々) ●オリーブオイル・・・・大さじ1 ●マリネ液(バルサミコ酢大さじ2、EVオリーブ油大さじ3、レモン汁1/2個分、おろしニンニク少々、塩・こしょう少々) ●イタリアンパセリ少々
- マリネ液の材料をボウルに入れ、よくかき混ぜます
- 湯浅なすを適当な大きさに切り、切り口に塩をふり5分から10分程度置いてから、水気をふき取ります
- オリーブ油をひいたフライパンでナスを炒め、火が通ったらマリネ液につけて30分以上置きます
- 器に盛り付け、飾りにイタリアンパセリをのせて出来上がり
地域の歴史的魅力や特色を通じて、日本の文化や伝統を語るストーリーを認定する「日本遺産」。今年度、新たに「『最初の一滴』醤油醸造の発祥の地紀州湯浅」が認定されました。
はるか中世の時代にさかのぼる醤油の歴史。宋に渡った禅僧が伝えた径山寺(きんざんじ)みそづくりが湯浅で盛んに行われ、みそから出るたまり汁が醤油となって、やがては産業に発展していきます。こうした湯浅の醤油造りを伝えるストーリーが日本遺産として認められ、同町の醤油醸造の歴史を色濃く残す町並み「湯浅町湯浅重要伝統的建造物群保存地区」と、醤油醸造に用いられてきた道具などがそのストーリーを構成する文化財とされています。
日本遺産の認定について
和歌山県文化遺産課 | 073(441)3740 |
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湯浅町ブランド戦略推進室 | 0737(63)2552 |