2021年わかやま 近未来予想図
- 2017/3/30
- フロント特集
2020年の五輪開催に向け“建設ラッシュ”に沸く東京。しかし、まちの様相が変わるのは大都心だけではありません。市街地の空洞化問題が叫ばれて久しい和歌山市にも旋風が…。変わりゆく私たちのまちの“近未来図”を解説します。
きっかけは学校再編
3つの再開発事業に3大学開学へ
百貨店の「丸正」や「大丸」、ファッションビルの「ビブレ」があり、ぶらくり丁がにぎわっていたのはもう15年以上も昔の話。大規模商業施設の郊外化、ロードサイド店の台頭などにより全国の地方都市で、中心市街地の衰退が問題となる中、和歌山市もご多分に漏れず、これまで幾度となく「中心市街地の活性化策」が検討されてきました。
ここにきてその動きが一気に加速。皮肉にも発端となったのは、市内中心部の人口減少、少子化に伴う学校再編がきっかけで、まずは今年4月、城北公園・城北小学校跡地に公立の小中一貫校「市立伏虎(ふっこ)義務教育学校」が開校。統合により閉校となった雄湊(おのみなと)小学校、本町小学校、伏虎中学校の跡地では東京医療保健大学(仮称)和歌山看護学部、(仮称)和歌山信愛大学教育学部、和歌山県立医科大学薬学部の開学に向けて準備が進められ、和歌山市民会館も新しく建てられます。
一方、和歌山の玄関口・南海和歌山市駅前、JR和歌山駅近くの友田町と和歌山のシンボル・和歌山城至近の北汀丁では、市街地再開発事業も始まっています。すべてのプロジェクトが完了する2021年、私たちが住むまちは〝ミチガエルまち〞に変貌を遂げます。
学生が集う活気のあるまちに!
再開発も大学開学もすべて
和歌山市中心部半径1.5キロ圏内
まず、下記の「ミチガエルmap(マップ)」を見てください。上記で触れた3大学の開学予定地と再開発事業が進められている3エリアは、和歌山市中心部半径1.5キロメートル圏内の近距離にあるのが一目瞭然で、2021年にかけて順次、各施設が完成していきます。
とはいうものの、〝これらのプロジェクトが完遂すれば、本当にまちは変わるの?〞と、ここまでの説明ではまだ不十分で半信半疑では…。詳しくは、まちづくり・地域活性化を専門とする和歌山大学の足立基浩教授に解説してもらうとして(下記参照)、間違いなくいえるのは、〝まちなかに大学生がいる都市〞となること。市内には現在、和歌山大学、和歌山県立医科大学、和歌山信愛女子短期大学の3校がありますが、いずれも郊外立地。思い返せば、もともとは3大学とも市街地にあり、付近には商店が軒を連ね、にぎわっていましたよね。
「卒業後の就職、定住といったことも考え、保育、看護、薬剤師と人材が不足している専門性の高い大学を誘致しました。誘致が最終目的ではなく、目指しているのは、大学と地域が連携したまちづくり。まちに若者がいれば活気にあふれ、商機も生まれます」と、都市再生に携わる市の担当者らは口をそろえます。
一方、再開発事業では、これまで和歌山にはなかった〝医食住〞が集まる高層ビルや、公共施設と商業施設が入る駅ビルが誕生。「〝まちの顔〞は確実に変わります。しかしまだ点の整備にしか過ぎず、面へと広げていかなければいけません。観光という観点で和歌山城の魅力創出と合わせて、さらなるまちづくりを検討していきたい」と尾花正啓市長は話しています。
すべてのプロジェクトは和歌山市中心部半径1.5km圏内。2021年にかけて順次完成していきます。
1.和歌山市立伏虎義務教育学校(城北公園、城北小学校跡地)
地上5階(敷地面積約2万3000㎡)
9学年25学級(特別支援学級含む)、約650人城北・本町・雄湊小学校と伏虎中学校が統合して、小中一貫校が開校。入学試験はなく、学校区内に居住する児童・生徒が通学
2.和歌山市駅前地区(南海和歌山ビル)
地上12階、地下1階(地区面積約1万9000㎡)
南海和歌山市駅、図書館、商業施設、オフィス、ホテル、駐車場、駐輪場
事業主=南海電気鉄道
3.認定こども園・こども総合支援センター(本町小学校跡地)
敷地面積約2500㎡
現・和歌山市立本町幼稚園などを認定こども園に移行し、現在、和歌山市福町にあるこども総合支援センターを移転予定
4.(仮称)和歌山信愛大学教育学部(本町小学校跡地)
敷地面積約1万㎡
1学年80人、収容定員320人(4年制)初等教育分野(保育士・幼稚園・小学校教諭)の人材育成に特化。全国の信愛系の高校4校や短大3校を含め、初めての男女共学校
5.北汀丁地区(城西ビル・IBW美容専門学校)
地上13階(地区面積約3000㎡)
マンション(約40戸)、専門学校、福祉施設、商業施設、駐車場
事業主=和通、山本学園
6.東京医療保健大学
(仮称)和歌山看護学部(雄湊小学校跡地)
敷地面積約5800㎡
1学年90人、収容定員360人(4年制)
雄湊小学校の校舎・体育館を改修して利用。3、4年生は現・和歌山赤十字看護専門学校の校舎を使用
7.伏虎義務教育学校サブグラウンド(雄湊小学校跡地)
フェンスを張り、主に野球部の練習用グラウンドとして使用
8.和歌山県立医科大学薬学部(伏虎中学校跡地)
敷地面積約7000㎡
1学年100人、収容定員600人(6年制)
伏虎中学校は解体。文化財調査を経て2018年度から講義室や図書室などを備えた教育施設と研究施設の建設に着手予定
9.市民会館(仮称)市民文化交流センター(伏虎中学校跡地)
敷地面積約6500㎡
老朽化した和歌山市民会館を新築、移転。大・小ホール、展示室、会議室、和室、レストランなど備えた施設を予定し、コンベンションにも対応
10.友田町四丁目地区(ゴトウビル)
地上20階、地下1階(地区面積約4000㎡)
マンション(約100戸)、商業施設、託児所、医療施設、駐車場
事業主=四丁目再開発
導線を整備して学園観光都市に
今回の都市計画は、和歌山にとって大きな節目。転機がきたのかなと思います。これまではイベントなどソフト面での活性化策が中心でしたが、ハード面が整備され、3つの大学誘致に動いたのは非常に価値のあること。まちに学生が増えれば飲食店が潤い、そうするとアルバイトという雇用も生まれて好循環。また、付近には学生が住むマンションができ、不動産業界や生活関連産業も発展します。最低でも30~40億円の経済効果があるのではないでしょうか。
3カ所で進められている再開発については、新しくできたビルに人が集まれば、まちの構造を変えるというメリットがある反面、そこに人がこなければコストだけがかかるというリスクもあります。3つの再開発エリアと大学、和歌山城、ぶらくり丁を回遊できるようなまちなかの“導線づくり”が次なる課題。“学園都市”ではなく、“学園観光都市”にしていかなければいけません。人口が減少する中、1日でも2日でも滞在してくれる“短期移住者(観光客)”を増やさないと…。そのためには、まちづくり全体をマネジメントするプロデューサーのような人が必要だと私は考えます。宮崎県日南市は、そういう人材を全国公募し、彼のリーダーシップのもと、まちがよみがえりました。
あと、都市の発展に公共交通の利便性の向上は欠かせません。特に車社会の和歌山においては…。これは私の提言ですが、ぜひとも路面電車を復活させてほしいですね。高知市や長崎市、広島市など趣のあるまちには、路面電車が走っています。ぜひ和歌山市にも。